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―――遭遇した試しもなければ確証もない。

―――だが、存在しないとは限らんだろう?

―――信じるか信じないかはお前次第だ。

そんなやり取りの末―――奴の発言の一部は、自分自身の精神上の健康を考慮して記憶内でもバッサリと割愛したが―――怪しい笑みと共に何だかオカルト関連でよく耳にするような台詞を残して姿を消した訳だけど。

よくよく思い返すと、アーカードは“紅茶の精”の実在を仄めかすようなことを言いはしたけども、本人の口からは“いる”とも“いない”とも取れる発言は聞いていない気がする。いや、まあ、うん。結論を言えば実際には存在しないんだけど。
そう考えたところで、嘘だ騙されたと言いつつも、アーカード本人は嘘と呼べる嘘を吐いていないということに気が付いた。というか、あれは嘘というより挑発と言った方が正しい気がする。……そうだ、あれは挑発だ。今思えば完全に挑発だった。

(ちょっと待てよ……と言うことは、だ)

この時点でアーカードの意図は分かった。とんでもなく今更だけど理解した。それよりも問題はそこからだ。重要なのはその後の自分の行動だ。
若干冷静さを欠き始めているのを自覚しつつも、レンは頭の中でより詳しく噛み砕いてゆく。

今思い返しても腹立たしいことこの上ないアーカードの挑発めいた発言は、単にレンを焚き付けるためのものであった訳で、しかしながら彼のそんな意図など知る由もないレンは、その単純かつあからさまな挑発に易々と乗せられてしまったのであって、その結果、妙な闘志を燃やしてご丁寧にお茶まで用意して“紅茶の精”とかいう未知なるものを呼び出そうとひとり奮闘するに至った訳なのだけれども、だがしかし何度も繰り返すようだがそんなものは実在しないのであって。

そのことから何が導き出されるかと言うと、とどのつまり―――


段々と考えがまとまって行くに連れて、じわじわと込み上げてくる焦りと妙な羞恥に全身の体温が上昇しているにも拘らず、次第に膨らむ嫌な予感に背中を冷たい汗が伝うという、何ともちぐはぐな上に地味に凄い人体のミラクル現象をレンは体感していた。

そんな動揺と困惑の波に呑まれつつある状況の中、レンは優雅に煙草の煙を燻らせているインテグラへ視線を向け、おずおずと口を開く。そうして最も訊くことを避けたかった、多分恐らくきっと予想通りの答えが返って来るであろう質問を、恐る恐る投げかけてみた。

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設定タグ:HELLSING,ヘルシング , 女主人公 , 百合   
作品ジャンル:アニメ
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(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み(キリッ)いやホント冗談抜きにありがとうございます!アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……!マジもんの天使かよ……!?HELLSINGは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします! (2022年2月11日 20時) (レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと?オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねッ!続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて! (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2021年3月22日 22時

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