㉒ ページ26
世界の煙草事情に明るい訳でもなく、それほど物覚えがいい方であるとも言えないレンなのだが、インテグラが好む“
その箱の蓋を開けながら、彼女は次のように切り出した。
「今日は何日だ?」
「……え?」
インテグラの何の脈絡もない短い問いかけに、何だか気の抜ける声と共にきょとんとした表情を浮かべるレン。
(……今日は、何日?)
投げかけられた質問を頭の中で復唱しながら、レンはぱちくりと目を瞬く。
ええと……何だ。よく分からないが、よく分からないから少し状況を整理してみることにしよう。
自滅覚悟で腹を括って明かした内容にちょっと驚かれてやっぱり呆れられて散々冷淡な眼差しを向けられて痛いところを突かれまくって、恥ずかしいやら情けないやらで傷心しつつも焦るやら恐ろしいやらで混乱状態に陥っていたら突然名前を呼ばれて、一体何だろうと不安を胸一杯に抱えて待っていたところに投げかけられた質問が“今日は何日”……?
……さっきのやり取りからどうして今そんな流れになるんだろう。そもそも今日は何日って何だ?
どういう質問なんだ?何と関係があるんだ?どうしよう、割と意味が分からないぞ……。
「えっと……?」
インテグラの質問の意図がさっぱり掴めず、だからと言って状況を整理して考えてみたところでやっぱり理解が及ばず、レンは困惑気味の表情で頭上にクエスチョンマークを乱舞させる。
そんなレンに、インテグラは箱の中から取り出した葉巻の先端をシザーカッターと呼ばれる専用の器具でカットしながら、答えを催促するように再び質問を口にした。
「いいから答えろ。今日は何の日だ?」
「え?え?な、何の日……?」
あれ?今日って何かの記念日だったっけ?何の日って……一体何の日だ?
レンの頭上に更に増えるハテナマーク。
これが老化によるボケとは永遠に無縁そうな察しのいいウォルターであれば「そう言うことですね」とすぐさまピンと来るのだろうが、頭の機能にやや難ありなために今ひとつ閃き力に欠けるレンではそうも行かず。
(今日は何の日……何の日……んんー……)
顎に軽く手を当てたままその言葉を脳内で繰り返し呟くレンを横目に、インテグラは口に咥えた葉巻に火を点けている。たったそれだけの動作であっても、痺れるほど様になるのだからこのお方は。
こんな状況じゃなければ思う存分見惚れているのに、などと密かに思ったりしつつ、レンはうんうん唸りながら考え込む。
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壱(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み(キリッ)いやホント冗談抜きにありがとうございます!アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……!マジもんの天使かよ……!?HELLSINGは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします! (2022年2月11日 20時) (レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと?オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねッ!続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて! (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:壱 | 作成日時:2021年3月22日 22時