�� ページ13
その沸騰し始めの熱湯を、空のティーポットとカップに注いで全体を温めておく。これは温度差によって紅茶の香りや風味が損なわれないようにするためだ。
ウォルターによると、これをするかしないかで大きな差が出てしまうらしく、美味しく淹れる上では結構大切な工程なのだとか。うーむ、紅茶とは実に奥が深い。
ポットとカップを温めている間に残りのお湯をしっかりと沸騰させるため、レンはケトルを再び火にかけた。
そこまで終えて、レンは後ろにいるアーカードにちらりと目をやる。
未だ作業台の縁に寄りかかったままの彼は、ゆったりとした動作で厨房内を見回すばかりで、一向に立ち去る気配を見せない。レンはそんな彼を訝りながらも、「それはそうと……」と若干躊躇いがちに切り出した。
「め、珍しいね、こんな時間に起きてるなんて……」
「何、私にだってそういう日がある。気紛れ、とでも言う日がな」
気紛れで驚かされちゃ、こっちとしては堪らないんだけど。
どこか楽しげな口振りで言うアーカードに、レンはそんな意を込めた冷ややかな視線を送ってみた。当然、何の効果もなかったが。というか、そもそも何しに来たんだこの男は。もしかしてわざわざ人の寿命を縮めるためだけに来たんじゃないだろうなこいつは。
「それで……な、何か用でも？もしかして紅茶飲みに来たとか？」
吸血鬼であるアーカードが口にするのは血液のみ。レンがこの屋敷に来て数年は経つが、彼が人間の食べ物を口にしたところを目にしたことは一度もない。彼曰く、人間の食事は口に合わないのだとか。
そんな彼が紅茶を求めてわざわざ厨房へ来たなど、天地がひっくり返ってもあり得ないだろう。
そう思いつつも、あり得ない時間帯に出現した彼からあり得ない返事が戻って来るかも知れないと、レンはあえて投げかけてみた。が、案の定「そんなものはいらん」と
じゃあ何しに来たんだよ。いつもならあんたまだ寝てる時間帯だろ。棺桶に戻れよ。
見ての通りこっちは今忙しくてあんたに構ってる暇なんてないんだよ。
などとは口が裂けても言える訳がないので思うだけに止めて、彼に負けず劣らずのつっけんどんな口調で「あ、そう」とだけ返した。
もう無視だ無視。無視しよう。
そう思いはしても、どうにもこうにも気になって気が散って作業に集中できない。
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壱(プロフ) - 死音心音2.0さん» お褒めに預かり誠に光栄。まさに感謝の極み（キリッ）いやホント冗談抜きにありがとうございます！アイス共感のみならず、こちらの気遣いまで……！マジもんの天使かよ……！？ＨＥＬＬＳＩＮＧは今なお色褪せない名作だと思っていますので、今後も宜しくお願いします！ (2022年2月11日 20時) (
レス) id: 8ec81766f6 (このIDを非表示/違反報告)
死音心音2.0(プロフ) - HELLSING夢、しかも百合だと？オマケに文章まで最高ときたか……パーフェクトだ 壱。そしてお風呂で食べるアイス美味しいよねｯ！続き楽しみにしてます、寒さにはお気をつけて！ (2022年2月9日 2時) (レス) id: 2a5e77e557 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：壱 | 作成日時：2021年3月22日 22時
