Kleinod Ⅴ (ページ10)

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森本「…」
ジェシー「…うん、寝てる」
防護用のマスクを口元に着けたジェシーが、崩れ落ちた田中を受け止めて彼の瞼がしっかり閉じられているのを確認した。
森本は、その真っ黒い煙草を踏み消して、悲しそうな表情を浮かべて座っていた。
治療された怪我は痛い、それでも心はもっと痛い。

京本「…収めれた？」
霧散された煙を見てジェシーがマスクを取った頃、どうやら様子を見に来たらしい、京本が声をかける。
森本「一時的には…」
ジェシー「でも、わかんない。…また、暴れちゃうかもしれない」
京本「樹はどうしたの」
森本「苦しそうだったから、眠らせてあげた」
京本「…そう」

ジェシー「上層部に、何て説明したの？」
京本「そのまま。副作用が暴発した、って」
ジェシー「…こーちの事は？」
京本「言ってる訳ないでしょ。とりあえず、連れて帰ろ」
森本「うん…」
ジェシーが樹をそのまま姫抱きし、森本は松村を背負うと何も言わない京本の後に続く。

森本「…ねぇ、きょも」
京本「何」
森本「上層部は何も言ってなかったの」
京本「…」
森本「そんな訳ないよね、あいつら、絶対何か言ったよね」

京本「…恐れてたよ、俺たちの事」
強がるような声が聞こえる。その顔は、見えない。
京本「自分たちの自慢の「宝石」が、急に自分たちの知らぬ内に身内を傷付けに行ったから」
ジェシー「…やっぱり、上層部って、そんな奴等だったんじゃん」
わかりきっていた事だというのに、妙に虚無感を抱いてしまうのは一体何なんだろう。