Kleinod Ⅴ (ページ45)

今日:3 hit、昨日:2 hit、合計:171,986 hit

＊ページ45

その日の午後昼下がり、プチ会議の為に森本が食卓へ向かっていると、廊下で荒い呼吸をしながら蹲っている田中の姿を見つけた。
森本「樹！？」
どうにも例の一件以降、「あれ」の干渉が酷い時があるらしく、時折頭が割れるように痛くなる程にまで陥る時があるらしい。

森本は急いで彼の横に付き添うと、ゆっくりとその背中を擦る。
暫く擦っていると、次第に彼の呼吸が落ち着いてきた。
森本「樹、大丈夫？落ち着いた？」
《…あぁ、相当にいい気分だよ》
森本「……演じるのはやめた訳？」
そして、そうやって彼が弱っている時に、「あれ」が出てくるようになったのも。

《演じたってお前がすぐに見抜くじゃねえか》
森本「当たり前。だってお前偽物だし」
《ひでぇなぁ、「俺」だって人格なんだぜ？》
森本「とっとと樹に返して」
《あーあ。何でよりによって見つかるのがお前だったんだろな。あ、…チッ、もう目覚めやがった》

ふらりと傾いた体を支える。
田中「……ごめん、」
森本「もー！大丈夫だって！…何か、最近はすぐ返してくれるみたいだし？」
田中「うん。…ちょっと、気持ち悪いけど」
正直、素直に返してくれるようになった「あれ」への違和は拭えない。
もしかしたら何かしらのタイミングを見計らっているのかもしれない。

森本「大丈夫だって！樹が奪われそうになっても、俺がちゃんと戻してあげるから！」
田中「…ありがと」
森本「あ、時間ヤバい、早く行かなきゃどやされる！急ご！」