Kleinod Ⅴ (ページ41)

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ジェシー「こーちがこーちでありたいなら、これからもずっと、「高地優吾」で生きていこうよ…」
「そんな事…」
ジェシー「全部本物にするのは、駄目な事なの？」
「そんな都合のいい事、」
ジェシー「やっちゃっていいじゃんか」

黙ってしまった自分の顔に、ジェシーがその冷え切った手を触れさせた。
「え…？」
ジェシー「ほら、やっぱり「たすけて」って言ってる」
拭うような素振り、慌てて自分の頬に触れると、ツ、とゆっくり伝うように涙が流れていた。

ジェシー「ねぇこーち。…いや、名無しさん、「名無しさん」の我儘を言って」
「僕の…我儘…？」
ジェシー「うん。「名無しさん」は、どうしたいの？客観的に見て～、とかじゃなくて、どう、生きていきたいの？」
どうしたらいいかわからない。今まで、「僕」自身にそんな事言ってくれる人なんていなかった。

「…僕は、」
あぁ、こんなの、いつもと立場が逆転していて気持ちが悪い。
振り切ろうと思えば振り切れるのに、身体が動いてくれない。
いつもみたいに「嘘」で誤魔化せばいいはずなのに、もう何度も吐いたはずの「嘘」が喉を通ってくれない。

「…僕、は。…俺、は、「高地優吾」として生きたい…！」

だって、自分を見つめるその目が、あまりにも「光」に満ち溢れているのだから。
ジェシー「じゃあ、一緒に帰ろう、こーち！」
高地「……うん、帰って、…いっぱい、怒られよっか」
この光に縋れば、何だか自分が救われるような気がしたんだ。