Kleinod Ⅴ (ページ37)

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ジェシー「…こーち…何でそんな、嘘つくの…」
高地「…俺は、詐欺師だから」
ジェシー「それは「名無しさん」の話でしょ、高地は、詐欺師じゃないよ…」
高地「詐欺師だよ。みんなに嘘ついて、本当はないのに、後天性能力なんて自分は持ってないのにみんなに辛い想いさせて。それで騙してた、サイテーな詐欺師だよ」
ジェシー「誰も、こーちが嘘ついてたからって怒ってないじゃんか！」

高地「ねぇジェシー。【俺の事許さないでよ】」
彼の吸う煙草によく似た、僅かに甘い匂いがする。
おかしい、彼の「扇動」は、後天性能力なんかじゃない。
彼が生きていく為に身に着けた、彼の実力なのに。
ジェシー「許すよ、だってこーち悪くないもん…」

高地「お願いジェシー、【俺の事、嫌っていて】」
甘い匂いが強さを増す。振り払うように、少し息を止めた。
これは能力じゃない。違う。能力なんかじゃない、ちゃんと自分の意思を持てば。
ジェシー「嫌いになんか、なれないよ…！」
高地「俺はみんなに最低な事したのに？」
口調はいつもと変わらない、いつも通りの高地の声だった。

高地「ジェシー、前々から上層部の事嫌いだって言ってたじゃん」
ジェシー「言ったけど…」
高地「本当は慎太郎にプロジェクトに参加してほしくなくて、それでも参加させた上層部の事嫌いだって。俺は止められなかった、【俺も慎太郎が被検体になった組織に加担していたんだよ】」
怒っている訳でもない、ただ事実を告げるだけなのに、甘い匂いはずっと漂い続けている。
実際そんな匂いなどある訳もないのに、そういう風に錯覚してしまう。