Kleinod Ⅴ (ページ26)

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京本「…」
またモノクロームの基地の中にいた。
京本「…夢だ」
ここは夢、自分が1番望んだ夢の中だ。
いつものように、自分の思い通りに、自分が忘れていない事を標す為に、灰色の世界に色を塗りつける。

京本「…ドアの色は、ココアのような薄い茶色」
夢の中は自由だから。自分の思い通りの景色が広がるから。
京本「壁の色は、クリームのような薄黄色、窓から見えるお空の色は、淡い水色！」
いつもじゃモノクロにしか映らない景色も、極彩色に変わるから！
京本「軍服の色は、深緑、俺のチョーカーは、牡丹色、」
自分の描いた、自分の思い通りの世界で、こんな能力なんて要らないから、その色を見ていたい。

みんなと同じようにその色を見ていたい。みんなと同じ景色を見ていたい。
京本「…そう思うのは、駄目な事なの？」
駄目じゃない、駄目じゃないよね、だってここは自分の夢の中なんだから！
自分の理想、自分が1番欲しい、当たり前の色のある世界。
色があって、「6人」全員いて、後天性能力なんてない、ただの普通の軍人で、

普段なら罪悪感が募って覚める夢だけど、これからはずっといれる。
…いや、きっとこれが自分の現実になる。
もう、あっち側では6人揃って今まで通りが叶わない気がするから。
覚めない夢に浸って、それで、幸せに暮らして、

京本「だって夢の中は俺の望んでいる世界なんだから、そりゃずっとここにいたいじゃんか！」

だから、灰色の世界を極彩色に、カラフルに、塗って、塗って、塗って、塗って――！
京本「……あれ…」
全部全部塗りつくして、自分の思う通りに塗った基地を眺める。
京本「色って、こんなだったっけ…」
自分の思い通りのはずなのに、どうしてこんなにくすんで見えてしまうのだろう？

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