Kleinod (ページ3)

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ハッキングした防犯カメラの映像の小型モニターを傍らに置いて、その違法カジノの近くのビルの屋上に小さな折り畳み式の椅子にちょこんと座りながら建物の外を覗いている。
モノクロに染まる街はとても綺麗に、されど鬱陶しく染まっている。
ちら、と小型モニターの方に目を移すと先程許可を出した松村が暴れているのが見えた。
高地はまだ誰かと対話しているようだ。もう少し時間がかかりそうだ。

『きょもー、そろそろ出てくるよ』
「はーい」
牡丹のチョーカーが映える彼は、銃口を入り口の方向に向ける。
スコープ代わりのその目に映す景色をじっと見つめて、慌てたように出てきたターゲットの重役っぽい男の眉間に当たるように照準を合わせる。

しっかりと照らし合わされたそれは的確に相手の眉間を撃ち抜いた。
「はーい、完了」
『上役は片付けた？じゃあ後樹のところの女だけか』
『ねぇ！俺の出番まーだー！？』
呑気に呟く森本と退屈そうに叫ぶジェシーの声にうるさいなぁ、と零しながら銃を片付けようとした、その時だった。

「…あれ？」
ボディーガードと思わしき者たちが銃口を向けているのが見えた。
暗がりに潜むそれも彼には全て見えている。彼の視界は誤魔化せないのだ。
「往生際が悪いなぁ、もう」
照準をすぐに合わせて引き金を引く。彼の射撃は寸分違わずボディーガードを撃ち抜いた。

「ねぇ、俺の目、誤魔化せると思ってるの？」
その世界に色はないけれど、確実に彼の視線は敵を捉えられる。
逃げ切る事など、赦されないのだ。

＊

■京本大我
情報部兼遠距離。武器はアサルトライフル。
牡丹のチョーカーを着ける男。
後天性能力は「超視力」。副作用は「色盲」。
全てを見透かせる目を持った。スコープなしで照準を合わせる事も、遠くの景色も、どこか別の国の誰かが撃たれる現場も、見たいもの視たくないもの全てを見る目を！
…されど、その世界に、色は存在しない。彼が見る景色は全て白と黒と灰色の世界。彩度である程度の色は認識できるけど、それでもやっぱり、白と黒、それ以外を見たいと思ってしまうのは、贅沢だと言うのだろうか？