Kleinod (ページ17)

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煙の間に見る夢は、その人が1番求めているものだという。
森本「だとしたら、俺ってどんな夢を見ると思う？」
田中「ん？」
小さく作られた喫煙所で、いきなりそう言いだした森本を見やる。
お互い能力を行使するわけでもなく、ただただ嗜好の為だけに吐き出された白煙は換気扇にゆらゆらと消えていく。

森本「俺の煙で見る束の間の夢」
田中「そりゃ慎太郎が1番欲しいものでしょ」
森本「…わかんねぇ」
田中「じゃあ俺がわかる訳ねぇだろ」
森本「いつもあの中に入ってみようと思うんだけどさ」
田中「やめてよ、慎太郎が発狂したら面倒臭い」
森本「いや何かちょっと眠くはなるけど、全然見れないんだよね」
田中「あー、耐性着いちゃったんじゃない？俺と同じで」
森本「かなぁ？」

田中と森本の2人の能力はよく似ている。
煙草を使って田中は毒を混ぜ、森本は幻覚作用を混ぜ、元は戦闘用として使っていたそれが、嗜好品としてこうやって吸うようになったのはいつからだっただろうか。
高地「うわあっま、これ慎太郎だろ」
田中「あれ、いつの間に帰ってたの？」
高地「ついさっき」
そこに入ってきた高地は、森本の吸う煙草の甘い匂いに顔を顰めると、彼とは少し距離を置いて煙草に火を着けた。

田中「よくそんな甘いの吸えるよな～、何だっけ、バニラ？」
森本「ブラックデビルのアイスバニラ」
高地「胸焼けしそう…胃もたれもしそう」
田中「おじいちゃん」
森本「え～でも俺の恩師がこれ吸ってたから…」
高地「エイルさん？」
森本「そう。いっつも仄かにバニラの匂い漂わせてたんだよ」