Kleinod (ページ1)

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0:グループSの「宝石」たちページ1

裏カジノ、そういう言葉が1番似合うだろう。
まあ少なくとも、こんなところに軍人が入るなんて任務以外ではないんだろうなぁ、と思いながら、常盤色のチョーカーを首に巻く彼は柱にもたれかかる。
何故今彼がこんな場所にいるのか、それは至って簡単な理由で、今日の任務の場所がここだからである。
違法カジノの大元、言わば拠点地を1つ丸々潰す、という軍隊というよりかは裏社会にいる人間がやりそうな任務。何でこっちに回してきたんだろう？
まあ楽だからいいけど。

壁にもたれかかる彼の事を、誰も気には留めない。
まるで誰もそこにいないかのように、人は彼を認識していないかのように通り過ぎていく。
『しんたろー、動いていいって』
「んー」
無線からの声に小さい声で答えて、彼は胸から煙草を取り出す。
口に咥えて火をつけて、煙を吐いた。

薄緑色の煙は、ふわふわ、ふわふわと侵食するようにカジノの中を占めていく。
その内、何かに気付いた客の1人が悲鳴の声を上げた。…いや、得体の知れない声を上げた。
悲鳴は伝染するかのように、広がっていく。
何もいない場所に向かって指をさして、誰かの名前を叫び続ける男や、テーブルを撫で続ける女に、虚空に縋り続けるディーラー。
一瞬にして阿鼻叫喚と化したその場を見て、彼は煙草を足で揉み消すと、腰に下げていた短刀を取り出して大きな声をあげた。

「さぁ、さぁ！大事な人に赦しを乞いながら、その人の元に会いに行けよ！」

＊

■森本慎太郎
遊撃。武器は短刀と小型爆弾。
常盤のチョーカーを着ける男。
後天性能力は「煙」。副作用は「存在希薄」。
その息は薄い緑色の煙に変える事が出来る、それを操って相手に幻を見せたり敵の視界を奪ったり。煙草の煙として混ぜる事もお手の物。見たくないものは全て煙に巻いてしまえば、何も怖いものは見ていないし幸せな夢を見れるでしょう？
この煙と共に全てが、自分の全てが有耶無耶になってしまうような気がして仕方がない。だから今日も大きな声で笑って、喋って、存在証明を。「ほら！俺はここにいる！」