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何回も何回も窓から外を眺めた。アズールが来てくれるのではないかと期待を胸にくるくると髪の毛を弄る。この間砂浜で綺麗な玻璃を拾ったのだ。光に向けて翳して見れば目一杯に光を様々な方向に反射させてるこの玻璃は、眩しくて綺麗だ。きっとアズールに見せたら鼻息を荒げて興奮するに違いない。彼はこういうきらきらしたものが案外好きなのだ。器用な足を使ってアクセサリーなどによく加工している。

私の付けているネックレスも、私が拾ってきた宝石をアズールが加工したものだ。色のついていない透明な宝石は、海の色をそのまま見せてくれてとても綺麗だ。

ダンダン、と大きな音が聞こえて顔を上げた。窓ガラスを勢いよく叩いているのはフロイドだった。柄にもなく焦ったようにぶくぶくと口から泡を出していた。その後ろにはいつものにやにやとした困り顔は何処かに置いてきてしまったのかと疑うほどに口を結んだジェイドがいる。窓を開けた。

「ねえ、どうしーー」
「A、どうしよう!!!」
私が言葉を言い切るより前にフロイドが思い切り叫んだ。猛烈な彼の剣幕にばっくーん!と心臓が飛び跳ねた。ジェイドはフロイドを宥めるように彼の肩に手を置いた。

「フロイド、落ち着いてください。Aが困っていますよ」
「落ち着いてられるわけねーじゃん。第一ジェイドだって落ち着いてないくせに」
「二人とも、どうしたの」

鏡に写したような二人が、これまた鏡に写したように同じタイミングでゆっくりと口を開けた。
「ーーアズールのAの記憶がなくなっちゃった」
「ーーアズールのAの記憶が消えてしまったのです」

てん、てん、てん。三点リーダーが二個並んだみたいな沈黙が私たちの間に流れた。そのあと私が出したは?だか、え?だかわからないような声は自分で聞いてもびっくりする位に海の底のように低くて冷たい声だった。

「どういうこと?」
「僕たちにもよくわかりません。でも、とりあえずアズールに会ってくれませんか」
「顔見たら思い出してくれるかもしんねーし」
いつもみたいに間延びした喋り方をする癖に、フロイドの溶けたような目は鋭くて否応なしに緊急事態だと言うことがわかってしまう。

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作者名:華陽 | 作成日時:2020年10月11日 22時

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