相互依存でハッピーエンド/ut ページ9
相互依存でハッピーエンド
スマホで時刻を確認する。
液晶画面に表示された数字は、もうとっくに日付けが変わったことを示していた。
一瞬、他所に一泊することを考えたが、すぐにその思考を打ち消した。
だって、
「おかえり、鬱せんせ」
家でAが待っとるんやから。
「ね、ちょっと座って」
かわいい彼女に言われるがまま、僕は椅子に腰を下ろす。
「どうして遅かったの?」
あぁ、その目。そんな泣きそうな目、せんといてや。
「他の女のところに行ってたの?」
まさか。そんな訳ないやん。
僕が愛してるのはAだけやって。
「じゃ、なんで甘ったるい香水の匂いなんか、つけて帰って来るの?」
あれ、そんなに匂うかな?
「笑って誤魔化さないでよ。私、私、こんなに貴方のことが、」
ごめん。
ちょっと相手がしつこくてな?別に手を出した訳やないんやで?
「……」
な、怒らんとってよ。可愛い顔が台無しや。
や、怒ってる顔もなかなかそそるもんがあるけどな。
「私、鬱先生に愛されないなら、死んじゃうから」
そんなことさせへんよ。だって僕が愛してるのは、Aだけやねんから。
「私、鬱先生を狙うひとがいたら、その人のこと、消しちゃうから」
そんなことせんとって。どんだけ誘惑されても、Aに勝てる女なんておらへんのやから。
「私、鬱先生と一緒にいられないなら、」
「一緒に、死んでやるんだから」
ぞくり。
その顔。
その目。
全てを憎んでいるようで、実際は僕しかうつしていない。
今、この瞬間、Aの世界には僕しかおらんし、僕の世界にもAしかおらん。
あぁ、こんなに、こんなに、こんなに。
「愛してるで、A」
こんなに求めあってるんやから、こんなに幸せなことは、きっと、あらへんよ。
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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
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