心臓を射抜け/shao ページ8
心臓を射抜け
待ち受けるものはバットエンドだって知っているけれど、そんなことは大した問題じゃない。
だって、彼が狙うのは私の心臓で、私が狙うのもまた、彼の心臓なのだから。
“戦争が終わる”
そんな話を耳に挟んだ。
ま、当然だろう。
私は負けていないけれど、全体として敗戦は増えていくばかりだし、無能の足で踏み荒らされたこの国の軍は、どう足掻いたって、かのグルッペン・フューラーには勝てない。
そんなことすら、どうでもいい。
この国に良い思い出はないし、世話になった人ももういない。
残念な点を挙げるとすれば、もう戦場に立てなくなることくらいか。
シャオロン。
私の好敵手。
貴方と戦うのも、今日が最後になるだろうね。
さぁ、心臓を狙って。
今日こそ、その手で私の心臓を射抜いてよ。
でなければ、私が貴方の心臓を射抜いてあげる。
「……いい天気」
肌にまとわりつく、この空気が心地良い。
どうやら、私はここでしか息ができないらしい。
殺気。
真っ直ぐで、純粋な、愛おしい感情。
……来た。
さぁ、最後に殺し合おうよ。
「なぁ、A」
鋭利な刃が頬を掠める。
「なに?」
避けた足で相手を蹴りあげる。躱された。
「もうすぐ負けるで、そちらさんの国」
死角から飛び出す拳を防ぐ。
「そうらしいね」
随分と、今日は良く喋る。
「なんや、案外さっぱりしとるんやな」
隙あり。
「えぇ、だって未練なんて無いもの」
あっ、
「ふぅん、そか」
気の無い返事と同時に、私のナイフが宙を舞った。
反転した視界、見下ろす彼の顔。
……うん、初めからわかってた、バットエンド。
「あー、これは完敗」
掲げた腕を、彼は、真っ直ぐに振り下ろした。
「俺の勝ちやな」
いや、まあ。貴方に殺されるなら、案外バットエンドでは無いのかもしれないけれど。
ガキィンッ
それは、予想に反した軽い音。
金属と金属とがぶつかり砕ける、そんな音。
「これでお前は死んだな」
「……は?」
砕けたのは、私とドッグタグを繋ぐ鎖。
砕いたのは、彼。
「なぁ、ハッピーエンドを、持ってきたんやけど」
俺と一緒に来てくれへん?
だって。
……はぁ?なにそれ。
「ふっ、死者に拒否権は無いのよね?」
私の心臓は、とうの昔に貴方に射抜かれてたのよって、似合わないこと言ってもいい?
263人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「wrwrd」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ