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人魚姫は泡沫に/kn ページ42

人魚姫は泡沫に



生まれて初めて誰かを好きになった。
それは、今まで抱いたことがない感情。
みんな、私を愚かだと笑ったけれど、それでもいいと思ったし、実際愚か者だと思う。

彼と私は結ばれない。

彼には二本の足があった。
私には一枚のヒレがあった。

彼には背負うべきものがあった。
私には守るべき掟があった。

彼には課された義務があった。
私には向き合うべき問題があった。

なにもかも。
同じところなんて無かったし、幸せは訪れないって知っていた。

それでも、私は彼と幸せになりたいと願ってしまった。

「A、いうんか?」

あぁ。
二本足の私の名前を、初めて貴方が呼んでくれた時。
この時のために生まれてきたのかもしれないなんて、大袈裟でもなんでもなく思ったの。

「今度、結婚するんや、俺」

いつか、そういった貴方の横顔。
笑う貴方は幸せなはずなのに、どこか悲しそうに見えたのは、きっと私が悲しかったから。

“この短剣であの男の心臓を貫いて”

月夜の晩、波打ち際で姉様が言った。

“あんな、貴方に愛をくれないヤツの為に、貴方が泡になることなんてないわ”

さめざめと泣く姉様を見て、ズキリと胸が傷んだ。

……声を捨てた愚かな私が、今さらあの人を刺すなんてできると思う?

ごめんなさい。
私には、そんなことはできそうもないよ。

月が高い。
今夜、私は泡沫となる。

人魚姫に泡沫を/kn→←自意識アイロニー/os



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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田螺 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月23日 18時

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