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勝利は貴方と共に/gr ページ34

勝利は貴方と共に



「なぁ、A」

その声に、初めて合間見たあの時のような、威圧は無い。

「なんですか?」

かけられた優しい声に、同じくらいの愛しさが溢れた声が返される。

「……そこにいるか?」

「はい、おりますとも。
私はいつも貴方の傍にいたでしょう?」

白く、美しい手が、優しく頬に触れる。

「お前はあの時と変わらんな」

ずっと、美しい

「あら、グルッペンも、変わらずかっこいいわよ?」

「知ってる。俺を誰だと思ってる?」

ふんっと、彼は鼻を鳴らした。
老いて尚、その威厳は衰えない。

「ふふ、それは失礼。総統閣下さま」

勝利の女神は、老いを知らない。
ずっと、変わらずそこにいるだけ。

「……すまんな、今生では、お前の願いを叶えられそうにない」

「それはこっちのセリフ。グルッペン、貴方の願い、叶えられなかった」

勝利の女神は人になる。
勝利の女神は人になりたかった。
主たる王の願いを叶えた時、勝利の女神は人になるのだ。
主たる王の願いを叶えた時、勝利の女神は人として生き、老い、土に還る。

“貴方は何を望むのですか?”

“俺が世界を制するまで、ずっとそばにいて欲しい”

遠い昔の遠い記憶。

「なぁ、A」

「はい、グルッペン」

「俺が世界を制するまで、待っていろ」

「ハイルグルッペン」

もう、待っていろだなんて、断らせる気無いじゃない。断る気なんて、ありませんけど。

「A」

「はい」

閉じていた彼の目が開かれる。
もう、世界を写せなくなったその瞳に、Aの姿が反射する。

「もう一度、名前を、呼んでくれないか」

「もちろんですよ、グルッペン」

愛おしく、優しく。
紡がれた音に、満足そうに王は笑った。

「おやすみグルッペン、良い夢を」

勝利を君に捧ぐ/gr→←勝利を貴方の手に/gr



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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田螺 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月23日 18時

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