1度目の告別/rb ページ27
1度目の告別
長い歴史の中、悲劇は喜劇よりも多く繰り返されてきたんやと思う。
望まない結末、幸せになれない終わり、絶望に満ちたラストシーン。そんなものだ。そんなものが、今自分の目の前に転がっていた。
「A……」
眼前に立つ最愛の人は、悲しげにこちらを振り向く。
「なんで、まだ、ここにおるん?」
悲劇にはヒロインが必要で、それは救われないほど名作となる。
彼女はこの滅びゆく国の姫様で、俺は敵国の兵士。ありふれた設定の、ありふれた展開。
「俺、教えたよね?もうダメだから、今日には、きっと終わってしまうから、どこかへ、どこかへ逃げてくれって、俺は、」
君を、悲劇の中に組み込みたくなんかなかったのに。
「……ごめんなさい。貴方の善意を踏みにじってしまって。でもね、ロボロ。私だけが、逃げるわけにはいかないってわかってるでしょう?」
なぁ。
君なら、そう言うと思った、なんてなぁ…。
分かりきっていたはずやったんだ。
君が、逃げへんことくらい。
「俺は生きてほしかっただけやのになぁ」
情けない声だった。
なんや、なんで俺が泣きそうで、君がそんな顔をしてるん?
「ねぇ、ロボロ」
優しい、あまりにも優しい声。
「叶うなら私は……君の手で、殺されたいの」
……そんなん、反則やん。
なんで、今になってそんな顔するん?
なんで、今さら泣きそうな目で俺を見るん?
なんで……なんで、最後にそんな酷いことを言うん?
「ごめんなぁ、A。これしかできへんくて」
「ありがとう、ごめんね。さよなら、ろぼろ」
君の頬を流れるものが、自分のものか君のものかなんて、もう、わからなかった。
「……もし、次を望む権利があるんなら、俺は、」
桜が舞う校門の前、クラス表を眺める君の横顔。ずっと、この時を待っていた。
なぁ、A。
もう、君にあんな選択はさせへんから。
やっと見つけた、愛しい人。
「今度こそ、君を幸せにする」
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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
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