誠実は白/ht ページ25
誠実な白
お国の為にたった彼が、どこで果てたかなんて知らないままに、ついぞ私の呼吸も止まった。
必ず君の元へ帰ってくるなんて言った癖にね。誠実な貴方が私についた、最初で最後の嘘。
どんな男性も、貴方に叶わなくて、結局結婚できなかった。そのせいで、どれほど肩身の狭い思いをしたと思います?……貴方を想ったまま他の誰かと幸せになるなんて、そんな器用な生き方できなかった。
何回目の帰省だろう。
お墓参りに来てくれる妹の曾孫が、時の流れを物語っている。
……もう、まだ期待してる。
ね、馬鹿みたいでしょう?
お盆に帰る度に、私、貴方と別れた時の姿で、お気に入りの一張羅を着て、精一杯のお洒落をして。
最高にかわいい自分で、貴方と会いたくて。
期待と、不安。
もう何度体験したことか。
何度落胆したことか。
上京したてのおのぼりさんみたいに、一生懸命貴方を探すの。
ふと、妹の曾孫と目が合ったような、気がした。
見えていない人と、こんなにばっちり目が合うことなんてあるのかしら?なんて考えていたら、その子はそっと手を横へ伸ばす。
つられて、人差し指が指す方向を見た。
「!!」
白い軍帽。白い軍服。
目を瞑って静かに佇むあの横顔。
記憶のまま。
そのままの、あの人。
気づいたら、既に体が動いていたけれど、気持ちばかりが先行しているようで、進んでいる気がしなくて、もどかしい。
やっと、やっと…!!
「ひとらんさん!」
「…!!Aさん!」
もう数え切れない程呼んだ、貴方の名前。
返事が返ってくることなんて、もう二度と無いと思ってた。
「……ただいま」
「おかえりなさい」
あぁ、やっと言えた。随分と、時間が経ってしまったけれど。
「気がついたら、ここにいたんだ。ずっと長いこと、なにか混沌の中にいた。たくさんの人が無念の内に去ったからかな、たぶん。
そしたら、君に似た、あの子を見つけたんだ」
一瞬君の子かと思ったよ、なんて。
「そんなわけないじゃありませんか。ひとらんさん、貴方、自分が言ったこと覚えてます?」
実直な貴方を、ずっと、待っていたんですよ。
「……遅くなってごめんね」
「えぇ、本当に」
まったく、仕方がないので許してあげます。
「もう、君を離したりしないよ」
「あら、離れてあげませんからね」
貴方に包まれて、夢にまでみた幸せに浸る。
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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
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