白の還元/ht ページ24
白の還元
帰宅後、私は祖父に曾祖母の姉のことを尋ねた。
曾祖母も綺麗な人だったらしいが、彼女も美人さんだったらしい。
そのまま話し込んでいたら、母に、明日はお盆なんだから話していないで手伝ってちょうだい、なんて小言を言われてしまった。
……お母さん、たぶん明日、彼女はうちへは帰ってこないよ。
だって彼女は……
翌日。
よく晴れ渡った空と、道々に灯る提灯。ここら辺では、お盆に外へ提灯を取り付ける家が多い。
それと、集合墓地に集まったお年寄りの方々が、銘々に故人の思い出を語る光景が、この地区の夏の風物詩であった。
そんな中、一人の女性が目に留まる。
整えられた黒髪と、ほんのり化粧が施された美しい顔。身に纏われた着物は、まるで彼女の一部のようで。
キョロキョロと辺りを見回しながら歩く彼女の、期待と不安とが織り交じった表情が、昨日見たものと重なった。
不意にこちらを見た彼女と目が合う。どこか母に似ている瞳に、私の期待が確信に変わった。
「……!!」
私がそっと指を指すと、彼女はめいっぱいその目を見開いた。
私の指の先には、彼女のお墓。
そして、そこに佇む白い青年。
パッと駆け出した彼女は、一直線に彼の元へ向かっていく。
振り返った彼も、一瞬、先程の彼女と同様驚いた表情を浮かべたが、すぐにそれはくしゃりと崩れた。
きっとこの瞬間を、彼らはずっと、ずっと待っていたんだ。互いをしっかりと抱いた二人が、輝いているように見えて。
なんだか此処にいることが無粋に思えて、私は踵を返した。
「ありがとう」
背中に、そんな言葉がかけられたような気がして、1度だけ振り返れば、もうそこには誰もいなかった。
「……お幸せに」
彼と彼女に、静かな平穏と、幸せが訪れますように。
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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
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