捕食者な君を/gr ページ21
バタバタと大きな足音を立て、逃げていく男を見送る。
この山には獰猛な獣がいる訳では無いし、死にやしないだろ。
「おい、A」
「あら、バレてた?」
名前を呼べば、彼女がひょっこりと顔を出す。
「折角お客様がいらしたのに、追い返しちゃうなんて」
残念、なんて言ってその小さな白い肩をすくめる。
「ふむ、どうやら我儘な姫君は俺だけでは満足出来ないらしいな?」
大仰に天を仰げば、腰に衝撃が走る。
「まさか!グルッペンったらヤキモチ?」
くすりと微笑むその顔は、とても少女とは思えない。
幼い顔立ちとのアンバランスさが、ある種の色気を醸し出している。
「さぁな。ただ、圧倒的勝者が自分である時に、弱者に嫉妬なんてすると思うか?」
腰に抱き着いてきた小さな体を抱き上げ、ソファに座る。
指の間からサラサラと零れる髪が愛おしい。
「まぁ!私は妬くことだってあるわよ?グルッペンが私以外の誰かといるのを見ると、ついつい噛み殺したくなっちゃう」
ツンっと口を尖らせながら、まったく、嬉しいことを言ってくれる。
「ふっ、随分物騒な姫君だ」
「大丈夫よ、いきなり惨殺するなんて、そんなはしたないコト今はしないわ!……それに、あんな小さな十字架、怖くもなんともないのよ?」
笑われたことと、俺が用心したのが気に喰わなかったのか、頬を膨らませながらの抗議。ふいっとそっぽを向かれてしまった。
「すまんすまん。どうだ、おかわりでもするか?」
機嫌を損ねてしまった我儘な彼女の首筋にそっとキスを落とす。
「もう、そうやればすぐ私が許してあげると思って?」
腕の中のお姫様は、一向にこちらを向いてくれない。
「参ったな、どうすれば、」
顔を上げそう呟けば、今度は彼女に口を塞がれてしまった。
「油断しすぎよ?」
その目は悪戯が成功した子どもそのもので。
「そうねぇ、今度はグルッペンが食べるっていうのはどう?」
弧を描く彼女の唇の隙間から、白い八重歯がちらりと見えた。
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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
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