腐敗の進行/tn ページ3
腐敗の進行
止められない。
それは、ゆっくりと、だが、確実に進んでいる。
「腐ってくよぉ〜〜〜」
「は?なんやねん、藪から棒に」
コタツに入り、ミカンを剥いていたトントンが、訝しげにこちらを見る。
「腐ってる!私が!これは由々しき事態!!」
腐敗だ。
これは。
「な〜にまたわけわからんこと言ってるんですかねぇ?」
机に突っ伏した私の口に、綺麗に剥かれたミカンの房が突っ込まれる。
「む、あいがお」
当たり前のように白いスジまで取られているそれを、もぐもぐと咀嚼する。
おいしい。
「って、こ!れ!
これが問題なんだって!!」
パアンと机を叩けば、ほいっともう一つミカンを渡された。
「あ、ありがと……じゃなくて!!ね、トントン私を甘やかしすぎじゃない!?いや、甘やかしすぎだって!!」
と、言いながら、追加で貰ったミカンを口に放り込む。や、乾燥したら美味しくないし?ね?
「そおか?そんなことないって」
「そんなことある!」
首を傾げても駄目!可愛いだけ!
「なんもできなくなっちゃうよ〜」
あまりの包容力と、面倒見の良さ。
それに包まれて、私の精神はどんどん腐敗していく。
「ええやん、それでも。俺がやったるし」
思いがけない返答に、突っ伏していた顔をあげる。
瞬間、こちらを見ていたトントンと目が合う。
「俺はそれでええよ」
艶やかな笑み。
伸びてきた指が、唇に触れる。
「とんと、」
少し、ほんの少しだけ。
トントンが、怖いと思った。
「あ、そろそろ夕飯の準備せんと」
パッと手を離し、立ち上がるトントン。
そこにいたのは、いつも通りの面倒見がいいトントンで。
「わ、私も手伝う!」
何かせねばという気持ちに駆られ、私も急いでキッチンへと向かった。
(大丈夫、気づいたって、もう止められへんから)
手綱を握るのはどちらか/em→←求めよ、さらば与えられん/os
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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)
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