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燻る煙草と流星群/kn ページ13

燻る煙と流星群



雑多な繁華街、雑居ビルの隙間から見える星空。
あれはなんという星なんだろう。今日見えると言う、流星群に関係がある星なんだろうか。

煙。
突如現れた煙が、僅かに見えていた星空を覆う。

「あ、ちょっと」

犯人は傍らで煙草をふかす彼、コネシマ。

「なんや、空ばっか見よって。あんなもん、何の得にもならへんがな」

そう言って、肺いっぱいにニコチンを取り込む。

「ロマンがないなぁ…。乙女心がわからない男はモテないよ?」

全く。
そんな体に悪い、何の得にもならないものを愛用しておいて何を言うのやら。

「まぁムキになんなって。流星群見せたる言うたやろ?」

そう、これから私達は流星群を見に行くのだ。
星を“あんなもん”なんていう彼を誘っても、断られるのがオチだと思っていた。
しかし、流星群を見たいと呟いたら、あっけらかんと、じゃあ行けばええやん、なんて返された。

「ほら、そろそろ行くで」

促されるがまま、車に乗り込む。
……内心、ものすごく浮かれていることはコネシマには内緒。

「……!!」

彼の隣で揺られること小一時間。
近くの山の山頂に着いた。

「すっごい綺麗……」

空一面の、星。

「せやろ?穴場なんやって」

大先生が言うてた、なんて言って、彼は持っていた煙草を揉み消した。

「ほら、始まったで」

彼の言葉に空を見上げると、そこには。

「……うわあ」

次々と、流れる星。
光の尾をひいて、いくつもの流星が弾けて消えた。

「……ありがと」

あまりの美しさに、少しだけ素直な気持ちになる。自然と口からお礼が零れた。

「なんや、珍しく、えらい素直やな」

ちょっと照れるわ、と豪快に笑う。

「珍しいは余計!というか、それはこっちのセリフ。コネシマが流星群に興味あるなんて思わなかった」

星を見たって、なんの利益にもならないのに。

「何言うとんの。お前のその顔が見れるんなら、俺は割と何だってやるで?」

頬、緩みっぱなし。

そう指摘されて、自然と笑っていたことに気づいた。

「……なに、珍しくかっこいいじゃん」

「珍しいは余計や」

先程まで、彼の肺を満たしていたニコチンの味がして。

重なる影の上に、いくつもの星が降り注いだ。

女子の必要最低限/zm→←五臓六腑の奏鳴曲−演奏者−/gr



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田螺(プロフ) - 夜風さん» 夜風さん、ありがとうございます…!勿体ないお言葉をたくさん頂きまして、感無量です…;;そのように思っていただけるなんて嬉しいです…。ご期待に応えられるよう次作も頑張ります! (2017年12月20日 21時) (レス) id: 755aeb3c0d (このIDを非表示/違反報告)
夜風(プロフ) - 完結おめでとうございます。短編集の中で、作者様の作品が一番好きで毎日更新を楽しみにしていました( *˙˙*)それぞれのお話の独特の世界観に引き込まれる感じがして読み込んでしまう魅力が凄いなぁといつもROMりながら思ってました(笑)また新作も楽しみに待っています (2017年12月19日 22時) (レス) id: 8e491b616a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:田螺 | 作者ホームページ:なし  
作成日時:2017年11月23日 18時

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