86皿目 ページ44
*
「__駒米、そういえば昨日の料理で話があるのだが」
私が牛島さんに近寄るよりも早く、牛島さんが私のもとへと歩いてきた。
いつもどおりの無表情で、昨日の料理の話、と急に言われたけれど、思い当たる節がない。
『昨日の料理……晩ごはんですか?』
「あぁ、昨日カレーを食べたのだが、いつもより上手く感じた理由が知りたい。なぜだと思うか」
唐突な変化球を一身で受け止めるため、私は過去の記憶を漁る。
昨日、たしかにカレーは私が担当したけど、それでも、別に今まで通りである。
それこそ、牛島さんに味見をしてもらってたときと何ら変わらない。
それなのに、美味しく感じた、と。
『……牛島さん、もしかして、お昼ご飯をあまり食べなかった、とか無いですか?』
「あぁ、昨日の昼はあまり食べなかった。いつもと比較して、だが」
私は自身のお腹を指さしながら笑う。
牛島さんは不思議そうに眉を上げた。
『空腹は最高のスパイスって言います。多分、牛島さんは自分が思っている以上にお腹が空いていたんだと思いますよ』
私が笑みを含みながら伝えると、牛島さんは自分もお腹を触り、薄く笑顔を浮かべた。
「なるほど、そういうことだったのか。やはり駒米に聞いて正解だな」
『う、嬉しいです……』
あまりに真っ直ぐな言葉に私が照れて俯くと牛島さんがゆっくり手を伸ばして、私の頭に大きな手をのせた。そして、少しだけ後頭部側に力を込める。
「…………」
『……? どうかしましたか?』
私が力に従うように顔を上げると、牛島さんは満足そうに頷いた。
そして一言。
「顔を見たかった」
言うまでもなく、私はどもりどもり、赤面した。
赤く火照った頬を隠したくて俯こうとすると、牛島さんがそれを手で防ぐ。
そんな攻防を繰り返していたら、冷ややかに燃え上がった声が飛んできた。
「__ちょっと待って、私ちょっと理解出来ないんだけど。……駒米さん、あなた、何者なの?」
見ると、怒り一色に顔を染め、頬を引くつかせる小鳥遊さんがいた。
「昨日の晩ごはんの話してたみたいだけど、どういうこと?」
声は言葉を重ねるごとに震え、怒りの気配を増していく。
その言葉で私は気がついた。
そうだ、小鳥遊さんは私の身の上話を知らないのか。
牛島さんの温かい手に、少しだけ力が加わった。
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きりんりん(プロフ) - 道化師さん» ありがとうございます!!言葉選び……そこまでしっかり読んでくださってるのですか!!嬉しいです!!ありがとうございます!!( ;∀;) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - ねこ。さん» ただいま帰りました!ありがとうございます!!とても嬉しいです……これからも頑張ります……!!(TдT) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 雪音さん» 無事帰ってこれました!ありがとうございます!これからもよろしくお願いします(*^^*) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
きりんりん(プロフ) - 彩夏さん» ありがとうございます!これからもよろしくお願いします!(*´∀`) (2018年5月27日 14時) (レス) id: ab681eea32 (このIDを非表示/違反報告)
ねこ。 - お帰りなさい!!私はこの作品と作者様が大好きです!!自信を持ってこれからも頑張って下さい!! (2018年5月27日 12時) (レス) id: 8444393bfc (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きりんりん | 作成日時:2018年4月4日 23時