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ニノが使い物にならねえ間、ニノの世話を焼けたのは翔さんだけで……それはニノが翔さんしか近寄らせなかったからなんだけど。
だから、大竹さんの事件の詳細は、俺達３人が警察から聞かされることになった。
まぁ……警察の豊川さんは『ニノにも説明済み』って言ってたけどさ……。
あんな状態のアイツに、それが正しく記憶されているかどうかも定かじゃなかったから。
関係者として俺達３人が聞いた……っつうか、聞かされたっつうか……。
事件の詳細は、こうだった。
まず、死体が発見された場所が殺害現場ではなかったという事。
大竹さんは、自分の身に危険が迫っている事を理解していたからか、自分に何かあった時の為に警察にとある端末を渡していた。
その端末の発信が途切れた事で、警察は大竹さんを捜索したのだけれど……その発信が途切れた場所というのが、他でもない俺達に依頼をしてきた張本人……上島さんの借りている部屋だった。
その部屋には遮光性の小瓶だけが残されていて、成分を調べてみたところ、中身は即効性で無味無臭な神経毒……何から抽出された物かは未だ判別出来ていないらしい。
そして被害者の死因を調べてみたところ、足を切断されたショックでもなく出血多量でもなく……毒によるものだったんだそうだ。
彼女の遺体が長い時間水に晒されていた事もあって、死亡推定時刻の幅も広かったらしいけど。
端末の発信が途切れた時間から前後１時間を加味して、前日の夜９時から１１時の間位との見方が強い。
幸い俺達は、全員が事務所に揃っていて、第三者であるムロくんも同席していた事でアリバイは成立したんだけど……。
不可解な点が幾つかある。
一つ目は、発信が途切れた部屋に嘔吐の痕跡はあったものの、血痕はひとつも残っていなかったこと。
二つ目は、なぜ彼女の足が切断されて、青いドレスと青いハイヒールを身に付けさせられていたのか。しかも、検死で分かった事だけど……彼女には、青い義眼が入れられていた。
三つ目は、上島さんが姿を消してしまったこと。
そして四つ目は、彼女が座らされていた『椅子』だ。
後から調べて分かった事らしいけど……その『椅子』には背凭れに『蛇』の飾り彫りが施されていたそうだ。
とても精巧に彫られたもので……本職でも一晩で作るには難しい代物なんだそうだ……。
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作者名：黒衣
| 作成日時：2017年5月31日 15時
