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◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
【部屋で待ってるね】
携帯に届いたメッセージ。
俺の部屋への最寄り駅に着いてから、これ以上出ない位の全速力で家までの道を走り抜けた。
ガラガラとスーツケースが壊れそうな音を立てようが、その音を聞いた人達が俺を避けるようにしていようが。
そんな事はどうでも良かった。
マラソン大会の後みてえに上がった息のお陰で全身が悲鳴を上げていて、自分の運動不足を反省しつつ。
部屋の扉を前にして、やっと。
あなたがもう来てるのかどうかも、何か買って帰る物があるのか確認もしていなかった事を思い出した。
ふっ…ふっ…と俺から吐き出される息が、やけに響いて聴こえて。
手元にあるキーケースから部屋の鍵を選ぶ指がブルブルと震えているのを止められない。
自分から吐き出される息と、手元でカチャカチャと鳴る鍵の音は、俺を追い立てるばかりで。
.
カチャ。
.
中から鍵が開く音が鳴って。
全身の力がフッと抜けて。
ゆっくりと開いた玄関扉の向こうには。
見たくて見たくて堪らなかった。
会いたくて会いたくて堪らなかった。
ふにゃりと微笑む、あなたの顔。
あんだけ全身で息してたみたいな呼吸が、ふ…って小さく音を立てて。
自分が息を止めてしまってた事に、ようやく気付いたら。
無意識に足があなたの方に動いた。
なんでか。
触れるのが怖くて。
ゆっくり伸ばした掌に。
あなたの方が擦り寄った。
自分の手に、あなたの手が添えられて、ふわりと頬の柔らかい感触を掌で感じて。
あれ、コレ現実だな。
『……なに言ってんの』
おかしな事を口走ってしまっていた俺に、あなたは前と変わらない笑顔を見せた。
『……おかえり』
「……ただいま」
この時の俺を、この人の言葉をそのまま使ってお伝えするとするならば。
『遠距離恋愛してる彼氏にやっと会いに来て、今にも泣きそうにウルウルして口をへの字にさせて、抱きつきたいのを必死に堪えてる彼氏溺愛型の彼女みたい』
…普段、長文しゃべらねえクセに。
堪らなくなってこの人を抱きしめた俺の後ろで、扉がガチャンと閉まる音を立てて。
その向こうで。
スーツケースの倒れる音がした。
◆7 (2017/2/13)→←◆5 (2017/2/12)
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やっち(プロフ) - 続きお願いします! (2022年3月27日 20時) (
レス) @page50 id: aabe067d77 (このIDを非表示/違反報告)
aap(プロフ) - このお話の世界観が大好きです。何度も何度も読み直しています。後編も楽しみに待ってます。 (2021年9月7日 11時) (レス) id: 4a13db19c7 (このIDを非表示/違反報告)
和(プロフ) - 後編楽しみに待っています (2020年7月5日 21時) (レス) id: fa0e394fce (このIDを非表示/違反報告)
虹子(プロフ) - こんにちわ。このお話の後半戦は書かれないのですか？続きがとても気になります！待ってますね！ (2019年11月11日 17時) (レス) id: 8a57abc50f (このIDを非表示/違反報告)
ゆぃ(プロフ) - こんばんは。楽しんで拝見させて頂いてます。この続きが気になるのですが、続きは書かないのですか?? (2019年11月5日 20時) (レス) id: f2d39d6227 (このIDを非表示/違反報告)
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