◆4 ページ34
◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
「……上出来」
「そうですか……」
２人並んで、扉を背にして。
ちょっと低い位置にあるAさんを見てみれば、眉毛をハの字にして少し困ってるような表情と、ふぅっと吐く息から少しは緊張が緩和されたのが窺い知れた。
そんな一仕事終えて微笑み合う俺達に聞こえたのは、大きくないのによく通る声だった。
「あれ？翔くんじゃん」
その声に弾かれたようにAさんに向けてた顔を逆方向に動かして、その声の主を見れば……おおよそ病院へ見舞に来たようには見えない、黒のＶネックに黒いパンツ、足元はサンダルなのに足音ひとつ立てず……見ようによっちゃあちょっと怖い。
ただ、彼をそう思わせないのは。
きっと彼が纏っている柔らかくて包み込むような雰囲気と、ふにゃっと気の抜けた微笑み……そしてぴょこんとはねた後ろ髪。
「あれ、義兄さん……お見舞い？」
「翔くん」
「ごめっ……智くん……」
「んふふ」
そして彼は、俺の義兄。
何を考えてるのか苗字は前のままの大野で通してるし、俺に義兄さんと呼ばれるのをひどく嫌がるんだよね……。
「……あれ？だれ？」
「えっと、櫻井さ……」
「あぁ……前に話した僕の義兄・大野智……旧姓のままなんだけど、戸籍上は僕の兄です」
「……ぼく？」
「智くん、こちら、AAさん」
「あっ、あのっ、はじめましてっ！」
「僕達、お付き合いしてるんだ」
一瞬ぽかんとした智くんは、眉間にグッと皺を寄せて唇を突き出し、俺とAさんを交互に何度か見ると。
はぁぁぁぁぁ……と盛大な溜息をついて俺を睨みつけながら、顎をしゃくれさせた。
「おれ、聞いてねーし」
「そうだね、言ってないね」
「どこの馬の骨だ」
「智くん違うって！そんなんじゃないから……そんなこと言ったらAに失礼でしょ？」
「……むぅ」
智くんは「信じてません！」っていうのを顔面……いやいや全面に全力で出してきていて……その姿はまるでご主人様の隣にいる知らない人に全力で威嚇してる小動物そのもの。
そんな義弟バカ丸出しな智くんを見て、口元がムズムズしちゃってる俺も大概なんだけど……。
「櫻井の名前と翔くんの顔に惚れただけのバカ女だって分かったら速攻別れさせてやるからな」
「だから違うってば……」
ホント、この人……。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 2118人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
黒衣(プロフ) - のりさん» こんばんは。お疲れ様です(*'ω'*) めっちゃ色々叫んでくれてる(笑) 天使の弁護士友情出演な上に義兄からのでろ甘え…はぁ、妄想って素晴らしい♪ きっと想定外で頭ん中グルグルしてる間中、あの指で唇プルプル…傍から見れば帝王なのに拗ねてるとか御馳走です！ (2017年11月5日 17時) (
レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - こんにちは。お疲れ様です。色々と叫びたいことが！え！？あの有名弁護士が！？え？婆ちゃん？wwえ！？お義兄様！？私召されかけましたけど！？何より。想定外にオロオロした後に執事に拗ねる帝王…万歳(泣)ええ。時折みえるかわいい帝王大好物です(泣) (2017年11月4日 17時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - のりさん» こんばんは。お疲れ様です(*'ω'*) 帝王なのに何人か頭の上がらない人がいる模様、ぶふ。時折かわいいをぶち込みたくなるのはお許し下され(きっと好きなハズ) お義兄さんと幼馴染兄貴の壁が私も楽しみで仕方ないのですよ(こら) 困って眉毛下げてるのが見たい！(笑) (2017年10月31日 17時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
のり(プロフ) - こんにちは。お疲れ様です。ぶふ。執事な潤とのやりとりに蚊帳の外になってる帝王。可愛すぎる(泣)帝王なのに可愛いてなに！？ぶふ。お義兄様、もしやお気に召しましたか？デジャブな人もいますからね？きっとお気に召したに違いないww続き楽しみすぎです(*≧∀≦*) (2017年10月29日 11時) (レス) id: 18c83a81d5 (このIDを非表示/違反報告)
黒衣(プロフ) - keiさん» keiさん、おはようございます(*'ω'*) にやにやしてもらえて嬉しい♪ やはりおやまはやまやましてなくては…横から抱きついてる様を想像するとそれだけで(こら) ニノちゃんにも可愛がられたい願望を溺愛という形にして解消するという(笑) ミラクルな彼にも期待(笑) (2017年10月28日 6時) (レス) id: 9cf8dc8670 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
