◆2 ページ38
◆SIDE-S◆
そんな暮らしの中でも。
俺にも『守りたいモノ』みたいな存在ができたんだけどさ。
なんつーの？
本当の「家族」なんて覚えてねぇし、この施設が、家みたいなモンだったし。
兄弟みたいな感覚っつーの？
一緒にいてやってもいいか、とか
何かあったら言ってこいよ、とか
ひとりで泣いてんじゃねぇよ、とか
そんな不思議な感情を持つようになってきたんだけど。
今思い出せば、ちっちぇえ独占欲だと思うんだわ。
そうすると、さ。
何かあったら、俺が守ってやりたい、とか思うワケで。
そうすると、さ。
将来的な事を考えると、チカラについて知れば良い訳じゃなくて。
社会の事とか、この施設の事とか、もっと世の中を知らないと…。
俺らは、こんな場所に落ち着いていられるハズがないんだ。
チカラを悪用されないように、
及んでくる害は排除して、
あいつらが真っ直ぐ進めるように
もっと先を見据えないと。
これから先、
こいつらを守れなくなる時が来る。
そんな予感がしたんだ。
俺をこの世に留めてくれた
あいつらの為なら
俺は何だってしてみせる。
同じ失敗は二度としない。
潤の暴走の時も、そう。
雅紀を助け出した時も、そう。
ニノが籠った時も、そう。
自分を諦めてた俺を、命を懸けて掬い上げてくれた、智くんの為にも。
もう、俺は傷付いたりしない。
知識をつけて、賢くなれ。
武器をつけて、強くなれ。
無駄に牙を剥く必要はない。
上手く世間を渡ってやればいい。
ここのオトナだって。
ちょっと優しくしてやったり、ふんわり微笑んでやったりすればコロッと態度を変えやがる。
世の中のヒトだって、そうだろ？
幸い、賢く綺麗に産んでもらったし？
適材適所ってヤツ？
誰かを癒したり、誰かに寄り添ったり。
そういうのは、あいつらの役目だから。
俺は俺の道を進めばいい。
表から見えるものは、努めて冷静に。
中身の激しさは、チカラに変換して。
そのために。
信じる力を。
恐れない力を。
暴いていく力を。
そのために。
愛する力を。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 71人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
