66 ページ16
.
「Aさ、」
「模試の結果のご褒美なんだし、やっぱり晩御飯も豪華にしたいと思ってたんだよね〜!」
「……」
あれなんかあんま伝わってねえ!?俺的には結構勇気の要る発言だったんですけど!?
しかしAさんは既に「ランチはイタリアンだから夜はご飯がいいよね〜」と夕飯の献立に思考を奪われていた。
「(…ま、いいか)」
俺が一緒にいたいと思ってたのは伝わったわけだし。Aさんも一応同じだったわけだし。
苦笑を零すと、「鉄朗は何がいい?リクエストなんでも聞くよ」Aさんが笑う。
「そっすねえ…好物は秋刀魚ですけど…あ、でもハンバーグとかもいいな」
「いいじゃんハンバーグ。秋刀魚も美味しいけどお祝い感ないし…おじいちゃんみたいだし…」
「魚は体にいいんですゥ〜〜〜ドコサヘキサエン酸が豊富なんですゥ〜〜〜〜〜」
「はいはい今度ね」
帰ったらスーパー寄ろ、とAさんが繋いだままだった手を引っ張る。不思議と朝ほど緊張はしなかった。相変わらず細い指は怖いけど。何でいつもあんだけ食ってんのにこんな細いんだ。
夕陽が俺とAさんを照らして、くっきりと影を作る。2人の間を繋ぐ手がふらふらとさ迷っている。
「何がいるかな、調味料系はあるし、玉ねぎとパン粉もあるでしょ…あ、サラダ油もうないな。あとひき肉と…おろしにんにくはこの前使い切ったんだっけな」
「え、ハンバーグににんにく入れるんですか?」
「うん。ちょっとガッツリ系の味にまとまって美味しいよ」
へえ、と感嘆の声を漏らすと「鉄朗は料理しないの?」
「作るには作るんですけど、うちは婆ちゃんが教えてくれるんであんまり洋食は知らないんですよね。肉じゃがとか筑前煮とか…あと適当な炒め物とか…」
「へえ〜おばあちゃんに料理教えてもらうのもいいね、私は一人暮らし始めてから作り出したから家の味とかじゃないんだよね」
雑談をしながら帰路に着く。向かう先がちょうど真西なようで、正面から夕陽が降り注ぐ。
だから俺は、全く気づかなかったのだ。
さっきからずっとAさんの頬が赤かったことなんて。
「鉄朗が急に一緒にいたいとか言うから!」と照れたAさんに背中を叩かれるのは、まだずっと先の話だ。
.
423人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
さき(プロフ) - めちゃくちゃおもしろいです!!このお話だいすきです!これからも応援してます‼︎ (4月11日 22時) (レス) @page15 id: 017d61e151 (このIDを非表示/違反報告)
yuuu(プロフ) - すごくすごくおもしろいです!黒尾さん、大好き!ここのクロかっこかわいいです (3月19日 6時) (レス) @page14 id: 6410d877bf (このIDを非表示/違反報告)
麗(プロフ) - 暁☆さん» コメントに加えて前作、本作を読んでいただきありがとうございます。更新が遅くなってしまい申し訳ないです。暁☆様にも楽しんでいただけましたら嬉しいです! (3月15日 8時) (レス) id: 61b67fe907 (このIDを非表示/違反報告)
暁☆(プロフ) - 続編おめでとうございます!久しぶりだったので最初から読み直したのですが、やっぱり好き〜!を噛み締めてしまいました…!続きを読めるのが本当に嬉しいです✨お身体気をつけて、作者様のペースで頑張ってください!これからも応援しています😊 (3月14日 20時) (レス) id: f3c28010ce (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:麗 | 作成日時:2024年3月14日 11時