「鉄骨娘」4 ページ24
「TDL、TDL行きたい!!」
「バッカTDLは千葉だろ!! 中華街にしよ先生!!」
「中華街だって横浜だろ!!」
「横浜は東京だろ!!」
『あれ、横浜は神奈川県やったような……?』
「虎杖と釘崎の地理がおかしいんですよ」
五条先生の口から飛び出した“東京観光”の言葉に、東京に出て来たばかりの虎杖くんと釘崎さんは目を輝かせて目的地の口喧嘩を始めた。
それを少し離れた場所から、恵くんと一緒に収まるのを待つ。
『私は観光よりも、食べ歩きたい派やなぁ……最近ちゃんと食べてないし、同級生に心配されたし。恵くんは?』
「俺を巻き込まないでください」
『ごめんて、恵くん。そんな顔しんといて』
私が軽く謝ると、恵くんは小さく息を吐く……これは完全に諦めたやつかな、なんかごめん。
恵くんとは、真希ちゃんが彼と手合わせをしている時に出会った。
手加減を知らない真希ちゃんの指示で何度か恵くんの相手をしていたら、いつの間にか五条先生によって一緒に組まされることが多くなっていて、今に至る。
でも……こうして一年が揃ったのなら、これから関わる事はほとんど無くなるだろう。
……それはそれで、何か寂しくなるなぁ。
「静まれ。それでは、行き先を発表します」
先生の制止に、虎杖くんと釘崎さんはその場で静かに片膝を付き、頭を下げた。
その光景に恵くんは呆れ果て、私は苦笑を零す。
「六本木」
どれほど魅惑的な響きだったのだろうか。
先程まで目的地の言い合いをしていたとは思えないほど、2人は輝いた目でお互い見つめ合った。
喜々として先生に続く二人の背中を眺めながら、私と恵くんも後を追う。
『ねぇ恵くん、六本木って何があったっけ?』
「一応、観光地はありますよ。でも、あの人が素直に観光案内するとは思えないんですけど……現に真逆に向かってますし」
『あ、そうなんや。……まぁ、そうやよねぇ』
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作者名:神屋之槭樹 | 作成日時:2023年4月16日 18時