eleventh kiss ページ11
翌日から数日に渡る練習
照りつける暑いサッカー場で
俺は煩悩を振り払うかのようにきついメニューを繰り返した
山口「拓実なんかすごいなぁ〜」
杉本「なんなんでしょ。今日も一番に朝来て練習してましたもん」
山口「怖いなぁ。なんかオーラがすごいやん。カオスやわ」
南野「見てないで、蛍君も練習してくださいよ!!」
山口「こっわー」
杉本「拓実反抗期か?あっ?こぇえ」
拗ねたように2人とも練習な戻っていく
そんな後ろ姿を眺めつつ周りを見渡してみると、今日も観客はたくさんいるけど、俺の会いたい人はいない
衝撃的なあんな出来事が起きてから、一度も会えていない
話すどころか、チラ見もできていない
避けられてるのかなって思ったけど、その手の仕事でAさんは大人気だから当たり前かもしれない
焦がした思いを抱え
そして忘れられない柔らかいあの感触と、濡れた瞳を思い出しては心臓がドクドク音を立てた
動いていれば、真っ赤な顔を隠せられると思って、俺はいつも一生懸命に練習に励む
…そうしたほうがきっとAさんも喜ぶから
練習終わりにサインをしたりファンと触れ合った後、クラブハウスに戻る
シャワーを浴びて帰る準備を整え、ロッカールームを出たときだった
廊下の角を誰が曲がったのが見えた
少しだけ見えた黒髪に惹かれ、追いかけてみると、外へ繋がる扉の先
南野「…あっ、えっ、Aさん」
と、その向こうには一人の男がいた
なんや。今俺が出たらダメなような雰囲気をしている
悔しいけれど、2人だけの世界があって、情けなく足が動かない
俺は息を殺して廊下角から2人を眺めた
男は身長が高くて、えらい顔が整っていた
眉毛が整ってて、目も大きくて、顔も小さい。周りには見ないほどかっこいい
きっと関西人ではない
「A。これ食べて休憩しな。食べないなら俺食べちゃうけど」
そう言って輝く笑顔で話題のドーナツをAさんに差し出した
Aさんの表情はまだ見えない
A「私がこれ好きだって知ってて、先輩これ買ったんですよね? 私ダイエット中なのに」
「とか言って受け取ってるし笑 」
ぽんぽんとAさんの頭を男が撫でた
その表情を見ればわかる。あの…Aさんの先輩の男は、Aさんが好きなんだと
あのAさんの黒い髪に男の手が触れたとき、心臓が破り裂けそうな思いだった
Aさんは振り払いもせず、それを受け入れて笑っていた
俺の知らないAさんが見えた気がしたんだ
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こいちゃん(プロフ) - 久々におじゃましたら、更新されてたので嬉しいです!続きが気になります! (2015年7月20日 14時) (レス) id: 0f3dad7032 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:がらし | 作成日時:2014年10月12日 21時