40 持ち帰る ページ12
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「Aちゃんも、バレー部の中に好きな人がいるのかもしれないけど…それなら余計、抜け駆けはずるいよ」
「うちらもうちらなりに頑張ってんだけどね。…バレー部の人たちって人気だからさ。悪いけどAちゃん1人が、っていうのはちょっと」
…………
「ごめんなさい…気を、つけます…」
スカートの横で拳をグッと握りしめる。
どうしようもない気持ちになる。
先輩たちの言ってることが
わからないわけじゃなかった。
「…ここまでついてきてくれてありがとね。そういうことだから…じゃあ」
「うん、ありがとうAちゃん。ごめんね」
「…はい」
先輩たちは去っていく。
私はその場から動けなかった。
…京治が好き。
だからこそ、一緒にご飯を食べたり
バレー部のみなさんと過ごすのが楽しかった。
でも、私が楽しければいいとか
そういう問題じゃなくて。
したくてもできない…
そういう人がいるってことも
ちゃんと理解しなきゃいけなかったんだ。
…あんまり仲良くしすぎるのも
良くないのかな。
この考えが浮かんだあと
ふらふらと教室に戻った。
席についてノートを写そうとしたけど
なんだかやる気になれなくて。
こうやってノートを借りたりするのも
抜け駆けになるんだろうか。
そう思ったら、手が動かなかった。
そして
…この日初めて、ノートを持って帰った。
付箋ももちろん書かなかった。
もやもや、ぐるぐる
先輩に言われたことだけが巡る。
駅に向かう途中
オレンジ色の夕日が
いつもより目に染みた。
─────
───
ガヤガヤした駅の中を歩き
もう少しで改札って時。
「お、Aチャン!」
後ろから名前を呼ばれて
定期を出そうとしていた手を止めた。
この声は、と思い振り返ると
そこには予想通り黒尾さんがいた。
「あ…こんにちは」
「よーっす。なに、今帰り?」
「はい。…黒尾さんは?」
部活無いのかな。
「今日は部活休みなんだよねー。だから今帰り」
「そうなんですか…えと、じゃあ」
そう言って、小さくお辞儀をし
その場を動こうとしたとき。
「Aチャンなんかあったのか?」
腕を掴まれて、真剣な声で聞かれた。
「…大したことじゃないんで、大丈夫です…」
「その割には顔暗すぎねー?よし、俺が相談に乗ってあげよう。行こーぜ」
「え!?」
私が声を上げるのとほぼ同時に
黒尾さんに引かれ、歩き出すことに。
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Niko.(プロフ) - こんな青春を送りたかった..... (7月27日 1時) (レス) @page30 id: 270b34836a (このIDを非表示/違反報告)
響咲 - すごいよかったです!『最後の一行』読んだとき、嬉しくて涙出てきましたw 赤葦かっこいい/// (2019年1月1日 20時) (レス) id: 00376a9a36 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - りさん» 最後までお読みいただきありがとうございました。この上ないほどのお褒めのお言葉をいただけて、作者冥利に尽きる思いです。コメントありがとうございました! (2017年1月23日 6時) (レス) id: 338e4d695e (このIDを非表示/違反報告)
り - いままで読んだ赤葦の小説の中で一番すき笑。すごいキュンキュンした。 (2017年1月21日 1時) (レス) id: 91e9e3b802 (このIDを非表示/違反報告)
ゆう(プロフ) - ?.さん» 最後までお読みいただきありがとうございました!私の思い描いていた赤葦さんに共感していただけたみたいで嬉しい限りです。甘酸っぱい恋のお話でした(笑)これからもお楽しみいただけるよう、頑張らせていただきます!ありがとうございました♪ (2016年6月15日 13時) (レス) id: 338e4d695e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆう | 作成日時:2016年4月11日 16時