37. ページ37
.
個室に通され、向かい合って座る。
なに食べたい？と聞いてくれる安井くんに、
えっと…とメニューを見ながらも頭が回らなくて
そんな様子を見て察したのか
店員を呼んで適当に色々と頼んでくれた
すぐに料理が並び、一口食べる。
安井「…おいし？」
「…うん、おいしい」
安井「…よかった。」
私の、おいしい という言葉に
ホッとした様子の安井くんは
自分もご飯をつつきながら、口を開いた
安井「…この前はさ、唐突にキスしてごめん」
「…う、ううん」
ストレートに紡がれた言葉に思わず躊躇する
安井「…俺さ、Aと映画出れるってなって
すっげぇ嬉しくて。でも、キスシーンだけが
どうしても許せなくて」
「…うん」
安井「なんでこんな許せないのか、
そんなのさ、考えなくても、わかんだよ」
「…」
安井くんの眉間にシワが寄る。
突然箸を置いた安井くんは
覚悟を決めたかのように私の目を見つめた
安井「俺が、なんであの日。
Aにキスをしたかというとさ、」
長年、安井くんと一緒にいる身だ。
安井くんがいま何を言いたいか、
何を言おうとしてくれてるか、
言葉にしなくてもわかった。
覚悟を決めたような目が、それを物語ってるから。
それは喜ばしいことだった。
だって私も同じ気持ちなんだから。
でも。
「まって、」
安井「…」
「お願い、まって。」
きっと私の目にはうっすら涙が浮かんでるんでしょう
貴方の顔が驚いているから
「言わないで、お願い。言わないで。」
安井くんの顔が歪んだ。
「…言わないほうがいい。やめとこう、
私たちはこのままのほうがいい。
この気持ちは抑えたほうがいい。」
私も同じ気持ちだと言っているようなもんだけど
震える声で必死に伝えた。
なんだか、付き合ってしまったら
メンバーの関係性もガラッと変わってしまいそうで
それがあまりにも怖かったから。
「……抑えよう？」
安井「……ん。わかった。」
安井くんは分かりやすい作り笑いをしたあと、
自分に言い聞かせるように何度か頷く。
メンバーという出会い方じゃなければ。
きっと。
きっと。
報われていたのでしょう。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 340人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
barumi(プロフ) - りんりんさん» そう言っていただけて嬉しいです（ ; ; ）ありがとうございます！ (2021年3月14日 23時) (
レス) id: f7d03e8b65 (このIDを非表示/違反報告)
りんりん - 更新が待ちきれず毎日みにきてしまいます。応援してます！ (2021年3月10日 20時) (レス) id: 5bcb1eb17e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：barumi
| 作成日時：2021年2月28日 23時
