冷笑の夜 ページ33
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目を覚ますと、
私はちゃんとベッドの上にいた。
あれは、
悪夢だったのだろうと思った。
「起きましたか。」
声がして視線を横に向けると、
そこに立っていたのは、
私の教育係でもあり
父親の右腕とも呼ばれていたヨコだった。
「母さんは?」
「・・・・・・」
その沈黙が、答えのようなものだった。
私は起き上がって、
ヨコに殴りかかる。
その拳を軽く抑えたヨコは
無表情のまま私を見下ろす。
「そない脇開いて、何にも当たりませんよ。」
「……返せ、母さんを返せ!!」
「Aさん、落ち着いて…」
「うっせー!この人殺し!!」
この家にいる誰もが、
そうなのだ。
私の母を殺した男には
誰ひとり頭が上がらない。
私が怒り狂って、暴れたって。
みんなが私の敵なんだ。
「こんな家……出てってやるっ…!」
「人殺しは、お前や。」
ヨコを睨みつけていると、
例の男が部屋に入ってきた。
「お前は人間やない野良犬や!
こんな家出ていくやと……?
飼い主に逆らうような駄犬は
こっちから捨てたるわ!」
「ふっ…」
「何笑っとんじゃ」
そりゃあ笑みも溢れる話だ。
血の繋がった私を目の前にして
自身のことを“飼い主”と形容した男。
構わず笑っていると、
男の拳が震える…
また、殴るのか。
「頭、時間です。
犬に構ってる場合やないですよ。」
ヨコがその背後から声をかけ、
男は壁を蹴って出ていった。
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有希。(プロフ) - ピエロさん» ありがとうございます!初コメント頂いて感激です。頑張ります! (2017年1月1日 16時) (レス) id: 26851cf6e5 (このIDを非表示/違反報告)
ピエロ - 今日はじめてみました。更新待ってます (2016年12月31日 17時) (レス) id: cb976b3c25 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:有希。 | 作成日時:2016年12月19日 19時