入間銃兎から逃げる２４時

さんじゅうに ページ32

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…まさか、心配されていたとは。
私の馬鹿な行動に腹を立ててるのだとばかり思い込んでいた。





何となくむず痒い思いをしながら、もう一度謝っておく。









身寄りのない私を心配して、ここまで追いかけてしてくれた入間さん。路頭に迷い、危うく体を売る道しか無かった私を助けてくれたのだ。



…感謝してもしきれない。
有り難さにようやく気づいたのだ。









「ありがとうございます、その、じゅ、銃兎さん」







そう笑いながらもう一度彼の方を見ると、銃兎さんは深いため息をついた。そして無言のまま、車を道の脇に止める。









「警戒心を持ってくださいとさっき言ったばかりでしょう」


「え？」


「そんな気を許したようなフニャっとした顔で笑うな。そういうのにグッとくる男もいるんだよ。」









シートベルトを外した彼は椅子を軋ませながら私に身を寄せた。タバコの匂いがする。


顔がぐっと近づいて、夕日が差す中、とても色っぽく見えた。









「俺みたいな、裏表があって疲れている、悪い男は特にな？」





「…っ」








ふ、と前髪に軽く息を吹きかけた銃兎さんは何食わぬ顔でシートベルトを締め、車を発車させる。




…キスされるかと思った。









なんて、ふしだら！！！！



真っ赤になる頬を抑えながらなんとか冷静になろうと素数を数える。








…73 79 83 89


いつもなら数字が埋め尽くされる頭が、埋まらない。









顔が、とてつもなく熱い。






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