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総悟は何も感じさせないような冷たい表情でソイツを見下ろしていた。
地に伏せている、最愛としていた姉に似た容姿を持つその女を。
そして俺は、ソイツをまともに見れていられなかった。
頭から血を流すソイツを見て、手が震える。
「どうしやすかィ。土方さん」
少し震えていると感じた総悟の声。それは俺の勘違いだろうか。
普通なら公務執行妨害かなんやらでとっつかまえて、コイツが攘夷浪士だったら仲間の居場所を吐かせていたところだ。
「...行くぞ、総悟」
「見逃すんでかィ」
咎めるような総悟の声に、拳を握る。
『コイツが姉上の顔にそっくりだからですかィ?』と聞かれたら、俺はどう応えればいいのだろうか。
「新選組、じゃなく。俺の名前を呼んでいたんだから。俺個人に恨みがあるんだろう。この女。
それに今別の案件で忙しいだろ。こんな小さな事件の犯人捕まえてる暇なんてねーよ」
口早にそう言い、歩みを進める。
言い訳、という訳ではなかった。
こいつが、ミツバの容姿と似ていなくても、俺はその判断を下した。きっと、そうだ。
総悟がまだ何か言いたげに口を開くが、やがて黙る。
倒れる女を見下ろし、総悟はそれ以上何も口にしなかった。
「このまま道に放置しておくんですかィ、土方さん」
「あ、あぁ...。そりゃ、まずいよな」
頭から血を流し気絶している女を道端に放置しておく訳にはいかなかった。
手拭いを取り出し、血が出ている個所に当てて止血する。
軽く掠っただけのようで、傷はそれほど深くないことに安心する。
更にもう一枚、総悟に手拭いを借りて傷に当てている布を固定した。
染みる血が痛々しい。
軽い応急処置を終えた俺は、そいつの上半身を起こし壁にもたれ掛からせた。
「じきに目を覚ますだろう」
自分に言い聞かせ、硬い表情でいる総悟を促す。
ゆっくりとその女から離れていくと、暴れまわっていた心臓が落ち着いたのが分かった。
手に浮かぶの大量の汗を拭う。
始めて俺は、動揺しているのだと悟った。
__思わぬ出会いに。
__アイツにそっくりな容姿に。
__憎しみを込めて俺の名を呼んだアイツに。
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?京華月 桜?(プロフ) - 真選組の字が違いますよ。「新選組」は現実で、銀魂は「真選組」です。 (2018年3月16日 12時) (レス) id: 8b9ff51846 (このIDを非表示/違反報告)
A .(プロフ) - 面白いです!更新頑張ってください! (2018年2月28日 22時) (レス) id: 7566c011e8 (このIDを非表示/違反報告)
恋姫-ここな-(プロフ) - とっても面白かったです!!その文才で私の小説を読んでいただきたい(( (2018年2月18日 20時) (レス) id: 1bf0eee3cc (このIDを非表示/違反報告)
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