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十二頁目◇ ページ15

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 暴行、暴行、暴行。凡ては訓練だと思って耐えてきた。――けれど、それよりも辛かったのは皆の視線だった。見下すような目、見て見ぬふり。凡て、恐ろしく感じる。

 ――ふと、思った。私が消えれば解決なんじゃないだろうか? 私が居なければいいんだ。厭、判っていたんだ。本当は必要とされてないだけだと云うのを……。けど、居場所が欲しかった。少しだけ顔をのぞかせる光に縋りたかった。――けど、それは私の我が儘で、不必要な物。

 認めてもらいたかったんだ。Aは必要だ、と云われたかったんだ。けど、私には遠すぎたみたい。

 何時の間にか、自分の瞳からは涙が流れていた。無理もない。今から自分で命を絶とうとしているのだ。怖いに決まっている。

「何か……残しておかなくちゃ」
震える手でペンと紙を持つ。死ぬ前に、お兄様に向けて残したいんだ。それは、所謂“遺書”で死ぬ人が最愛の人に贈る手紙だと訊いた。私の場合、お兄様だろう……。

 死ぬのは、マフィアのビルから飛び降りるのが善い。あの高さなら確実に死ぬし、大好きだったポートマフィアで死にたい。

 震える指でペンを置く。少し味気の無い砂色の封筒に入れ、封筒の上に【中原中也様へ】と、大きく書く。

「――さようなら……」
誰もいない机を触り、呟く。きっと、誰にも聴こえていないだろう。その方が善い。

 私は独り寂しく、屋上へと向かった。

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霜月白雨@狂人(プロフ) - 華さん» 申し訳ございません。消されてしまったようです。 (2018年5月1日 19時) (レス) id: c62dc48e07 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 認めてもらいたい(前作)が読めません。題名、この話の内容、コメントから察するにこれの夢主視点でしょうか?このお話すごく好きなので読んでみたいのですが…… (2018年4月7日 11時) (レス) id: 198a7174c6 (このIDを非表示/違反報告)
霜月白雨@実況者沼、ハマり中。(プロフ) - みゃにゃさん» 元気ですよ! 有り難うございます!! (2017年9月19日 6時) (レス) id: c62dc48e07 (このIDを非表示/違反報告)
みゃにゃ - げんきそーでようたw(´・∀・`) (2017年9月19日 5時) (レス) id: a23cd4a964 (このIDを非表示/違反報告)
霜月白雨@実況者沼、ハマり中。(プロフ) - 汚濁さん» 有り難う!! そう言って貰えると嬉しいよ!! (2017年9月18日 20時) (レス) id: c62dc48e07 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:霜月白雨  | 作者ホームページ:   
作成日時:2017年6月18日 1時

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