【刀剣乱舞】ブラック本丸の新しい審神者は一期一振の娘でした【弐】

49.勝手な刀 ページ9

｢あなたはどこまで自分勝手なの……！？

勝手に嫉妬して勝手に愛されていないと思って、勝手に謀反起こして勝手に私の人生無茶苦茶にしてッ！！

私が今どんな気持ちでいるかなんてわからないでしょ！？

あなたのせいで、私は……ッ！｣



少女の大きな声に、店内がざわつく。


男審神者と前田も、何事かと店内に戻ってきた。


衆人監視になる中、それでも少女は吐き出さずにはいられなかった。


この十年の、葛藤を。



｢……私、この年になってもまだ、あの謀反の時の夢をよく見るの。

その度に、自分の所の加州清光や新撰組の刀に殺されるんじゃないかって、思ってしまう。

本当に心の底から、彼らを信じてあげられないの。

...一期一振だって、顕現させるのに十年かかった。

本人は自分を父代わりに見てもいいなんて言うけど、彼はどう足掻いても私の父である一期一振じゃない。

私は彼らを、あなた達と同一視してしまう。｣



加｢……。｣



｢私はそれが嫌で仕方がない。

彼らは彼ら、謀反を起こすような刀じゃない。

……なのにこの身体は、あの時あなたに当てられた首筋の刀の感触を覚えていて、勝手に、彼らを遠ざけようとする。

...十年なんてあなた達からしたら一瞬かもしれないけど、私の人生の半分よ。

その半分を……あなたはめちゃくちゃにした！｣



加州の口が、ごめん、と動く。


もうお互いに泣きそうな顔をしていた。



｢……刀解なんて、自分の主にしてもらいなさいよ。

今の主がちゃんといるんでしょう。

それとも何？

あの審神者さんも、本当は主だなんて認めてないから私の所で刀解されたいの？｣



加｢−−ッそんなんじゃない！

今の主の事は認めてる！！｣



｢その言葉、私には言ってくれなかったよね...！

甘ったれ、前の主の娘ってだけの誰かに頼らないと何も出来ないガキ！

さんざん貶してくれたじゃない……だったら今の優秀な主様に刀解されればいい！｣



加｢それじゃあ意味が無いから頼んでるんだろ！？

それに消滅したら……今の主の所にもう1度顕現出来るかもしれない可能性だって、消える。

……俺はこの人に、今度こそはちゃんと仕えたいんだ！｣



瞬間、場の空気がまるで雪山もかくやと言わんばかりに下がった。


少女の瞳孔は、開ききっていた。


蜂蜜色の目いっぱいに開かれた瞳から、涙が一筋。



｢……本当に、どこまでも自分勝手な刀。｣



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