【刀剣乱舞】ブラック本丸の新しい審神者は一期一振の娘でした【弐】

66.二度目はない ページ26

加州はやがて重傷になった。


もう、打刀を持つ腕は上がらない、斬られた腹が痛み、心臓が早鐘のように鳴り続ける。


−−これは折れるな。


いやに冷静な気持ちになって、加州は次第に朧になる視界の中、刀を振り上げた遡行軍を見つめた。


...なんで誰も助けに来ないかなんて、加州にはわかっていた。


加州には、刀剣男士にしかわからない、本霊がつけた｢印｣が刻まれていた。


それが刻まれるのは、本霊から見限られた分霊のみ。


周りの刀剣男士達には、一目見て、加州が過去に大罪を犯して、本霊から見限られたどうしようもない分霊ということがわかってしまうのだ。


−−うわ、なんだあいつ……謀反刀か？


−−本霊に印付けられてるなんて、何したんだよ。


−−ああはなりたくないな。


演練会場なんて、少女を探す目的でもなけりゃ行きたくなんてなかった。


突き刺さる刀剣達の視線、憎悪、嫌悪。


男審神者の刀剣達にも、何でこいつが初期刀なのだろう、という風に思っている刀はがいることも知っている。


これが、報い。


愛されていた事を知らずに無碍にした俺の、惨めな最期。


隠れている奴らは、俺が謀反刀だってわかるから、折れてしまえって思ってる。


姫だって...俺なんか折れてしまえって思ってるだろうな、刀解してくれるって約束だったけど、そんなの絶対嫌々だっただろうし。


姫の加州清光も、もし今無傷だったとしても間違いなく加勢なんかしないで、俺がいたぶられる様を見てざまあみろって言うに違いない。


だって俺は、そういう刀だ。


最低な刀だから、ようやく大事にできた今の主も守れず、無残に折れる、そんな最期しか用意されない。


これは予定調和なのだ。


だからもう、俺は起き上がらないし、起き上がれない。



加｢は、は……。｣



−−ああ、でも、これでいい。


遡行軍の刀が、倒れ込んだ加州の背中を突き刺す。



男｢−−−加州ッ！！！

やめろ……お前そんなんでいいのかッ！！｣



｢……加州...。｣



ごぽり、加州の口から血が吐き出される。



加｢…………。｣



加州は自分の視界が暗くなっていくのを悟った。



−−これでいい、自分は折れて、消滅して、二度と顕現することはない、ああ、でも、



もう一度があるなら、今度こそは絶対に主を裏切りはしないのに……−−



ばきん。


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