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佐藤さんと後輩の山本くん?は、俺を見て顔を華やげる。「良いんですか!」と見たこともない程嬉しそうな顔で言う佐藤さん。山本くんが「先輩、レジは俺が守ってるんで、王子とごゆっくり」と親指を立てた。





「元々山本のシフトでしょ」
「確かに」





王子?と引っかかりながら、彼等の楽しげな会話を見つめる。佐藤さんは何度も謝って、コンビニの奥からノートパソコンを持って出てきた。

二人でコンビニの外の犬走りでしゃがみ込んで真っ暗なPCの画面を見つめる。





「……確かにこれ、かなり古いモデルですね」
「お金がなかったので……中古なんです」





なんとも学生らしい言種に、俺は少し笑う。俺の周りには、最新機種を揃えている人しか居ないから、この普通の価値観の子と接するのがかなり新鮮だ。
祈るような佐藤さんに見守られながらPCを弄る。見たことはあるから、なんとなくは分かる。





「……」
「……」
「あ」




俺がパソコンを弄っていると、ぶぉんと今時PCからしない起動音がして、PCが動き始めた。佐藤さんは感激したように「……よ、良かった」と声を出す。





「間に合いそうですか、レポート」
「はい!大急ぎでやります」





何年代なのかというワードファイルを立ち上げて、慣れない手つきでタイピングを始める。彼女に「貸して」とそれを受け取った。





「内容言ってください。俺打ちます」
「……え」
「早く」





佐藤さんは俺の真意が分かったようで、「げ、現代の……」と法律っぽい内容を辿々しく話し始めた。俺はそれを聞きながら、そこそこ早いスピードで打ち込んでいく。

あっという間に完成したレポートを見て、佐藤さんはものすごい勢いでメールを送ると、泣きそうな顔で「ありがとうございました」と頭を下げた。





「いや、そんな……」
「本当に助かりました、………………すみません、お客様にこんな……」
「……」





お客さんにパソコンの修理をさせ、レポートを打たせたという事実に今更深刻さを感じたらしい佐藤さんは、みるみる青ざめて「も、申し訳ありません」と何度も頭を下げた。
その様子がなんか可愛くて思わず笑う。





「いや、別に良いですよ、暇ですし」
「……」
「ただ、そのパソコンは買い替えた方がいいと思います」
「え」
「いつ壊れるか分からないです」





俺の言葉に大きく頷く佐藤さんに、「それじゃあ」と踵を返す。「あ、ありがとうございました、またお越しください」と定型文で返ってきた声。俺は思わず吹き出した。



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作品ジャンル:恋愛
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parumu(プロフ) - かえる。さん» はじめまして!ありがとうございます(;_;)♡これからも宜しくお願いします〜!! (2022年8月28日 21時) (レス) @page38 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
かえる。(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも楽しく読ませてもらっています!応援してます! (2022年8月28日 21時) (レス) id: 06d9623eb5 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - いぬU・x・Uさん» はじめまして!そんなふうに言っていただけて嬉しいです(;;)まだ何も起きていない平和なお話なのですが、楽しく読んでいただけると嬉しいです!ぼちぼち頑張ります〜! (2022年8月28日 21時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
いぬU・x・U(プロフ) - 初コメ失礼します…!とっても素敵なお話をありがとうございます!!これからも主さんのペースで更新応援しております〜!! (2022年8月27日 13時) (レス) @page37 id: b1951e364b (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - リーフィア推しの【タクト】さん» そうなのです、読んでいただきありがとうございます🥰 (2022年5月24日 20時) (レス) @page29 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62  
作成日時:2022年4月23日 16時

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