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本当にお世話になっているし、義理チョコなら距離感を間違ってはいないと思う。ただ、彼がチョコレートを好きなのか分からなかった。

今日は夕方のシフト。田中さんの隣で私がおでんを出している。





「Aちゃん、店長に聞いたけど深夜帯続けるんだって?」
「あ、はい」
「気をつけてよ〜?寒いから人通りが本当に少ないし、変な人多いから」
「私なんて狙われないですよ」
「あらやだ卑屈」





正直、店長の気遣いも嬉しいと思っていたけれど、不審者の話が出た時点で、私は自分で「私は大丈夫」と言い返したい気持ちがあった。リナみたいに特別可愛い訳では無いし、痴漢やナンパやキャッチとかの被害に遭うことって、昔から凄く少なかった。だからか、どこか他人事。

田中さんは「そういうのは私みたいなおばちゃんが言うんであって、Aちゃんみたいな若くて可愛い子が言うことじゃないわよ」とけたけた笑っている。





「ねぇ?」
「え?」





突然第三者に話しかけた田中さん。聞こえてきた吃驚した声に顔を上げると、丁度清川さんが商品を田中さんのレジの元へ持ってきたところだった。
「ごめんなさいね、いきなり話しかけて〜」と言いながら清川さんの品物をレジに通していく田中さん。清川さんは少しやりづらそうに苦笑いしている。





「Aちゃんだって気をつけなきゃダメよ。可愛いものねえ?」
「た、田中さん」





話し続ける田中さんを慌てて止めようとする。前に私と清川さんがレジで話していたのを見た時から、変に私に清川さんを勧めてくる。「お節介焼きたくなるのよ〜」と言っていたけれど、本人を目の前にして言うのはまた違う話だ。






「はい。可愛いと思います」
「……」
「そうよねぇ」
「……それに、不審者とかって多分誰でもいいって考えも多いので、気をつけた方がいいっすよね」





清川さんの言葉に、田中さんは満足気に頷いている。
私はと言えば、清川さんの口から出た「可愛い」に単純に心臓が飛び上がってしまった。男慣れしていないから……これだから……。自分を客観的に見て突っ込みながら必死に気持ちを落ち着ける。





「あ、バレンタイン近いから、これおまけね?チョコ好き?」





レジ横に置かれていたチロルチョコをひとつ取ると、清川さんの品物の入ったレジ袋に入れた。清川さんは「ありがとうございます」と嬉しそうにそれを受け取って、軽くお辞儀をした。
私の方もちらりと見ると、軽く頭を下げて、自動ドアをくぐっていった。


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作品ジャンル:恋愛
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parumu(プロフ) - かえる。さん» はじめまして!ありがとうございます(;_;)♡これからも宜しくお願いします〜!! (2022年8月28日 21時) (レス) @page38 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
かえる。(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも楽しく読ませてもらっています!応援してます! (2022年8月28日 21時) (レス) id: 06d9623eb5 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - いぬU・x・Uさん» はじめまして!そんなふうに言っていただけて嬉しいです(;;)まだ何も起きていない平和なお話なのですが、楽しく読んでいただけると嬉しいです!ぼちぼち頑張ります〜! (2022年8月28日 21時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
いぬU・x・U(プロフ) - 初コメ失礼します…!とっても素敵なお話をありがとうございます!!これからも主さんのペースで更新応援しております〜!! (2022年8月27日 13時) (レス) @page37 id: b1951e364b (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - リーフィア推しの【タクト】さん» そうなのです、読んでいただきありがとうございます🥰 (2022年5月24日 20時) (レス) @page29 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62  
作成日時:2022年4月23日 16時

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