32. ページ32
.
講義の空きコマの時間に、カタカタとPCでレポートを書く私の前に座ってスマホを弄るリナに、ココ最近の清川さんとの話をした。すると、思っていた通り、「素敵!!」と顔を華やげて食いついてきた。
「前にA、連絡先だって何してる人かも知らないのに、そんな事にならないよって言ってたけど、連絡先も職業も知っちゃったじゃん!」
「……」
そんな事言ったっけ。本人ですら忘れているこういう言葉を一つ一つ覚えているところが、この子の恋人が絶えない所以なのだろうなと思う。リナは口元を両手で押さえて、「これはもう!行くしかないよう〜!」と1人で盛り上がっている。
「行くって何……?」
「アプローチするってこと!」
「アプローチ……?」
別に私は清川さんに対して恋愛的な感情がある訳では無いと思う。素敵な人だなと思うし、一緒に居ると楽しいし、好意的には思っているけれど、彼とどうなりたいとかそういう話ではない。
リナに伝えると、「そっかぁ……」と意気消沈したように息をついた。
「じゃあ、この前言っていた、クリスマス一緒に過ごした……山本くんだっけ?バイトの後輩くんはどうなの?」
「山本?」
まさかの人物の名前がリナの口から出てきたものだから、ぽかんと口を開けて彼女を見つめる。確かに彼とクリスマスのバイトの後にご飯を食べに行ったけれど、それから特に距離が縮まった訳でも無い。「どうって……何も無いよ」と答える私に、リナは口を尖らせた。
「つまんなーい」
「私に好きな人が出来たらリナは嬉しいの?」
「嬉しいよ!好きな人がいるって、それだけで日常が楽しくなるものだよ?Aが幸せなら私も嬉しいし、Aと恋の話したいもん」
ニコニコ笑いながら言うリナに私も思わず笑みがこぼれる。
私も、20年あまり生きてきた訳だから、好きな人が出来たことが無い訳では無い。けれど、周りの子達を見ていると付き合っている時は幸せそうでも、結局最後は泣いて別れている子が殆ど。彼氏という存在に掛けた時間とお金は計り知れないのに、そんな風に終わってしまう。その価値観を否定する訳では無いけれど、私はしっくり来なかった。
リナは「バレンタインのチョコレートとか、一緒に買いに行きたかったよ〜」と半べそをかく。私は、少し思案する。
「……義理チョコ」
「……ほう」
「買いに行こうかな」
私の言葉に、リナはコロッと顔を華やげて「行こう!」と私の手を取った。
.
1074人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「実況者」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
parumu(プロフ) - かえる。さん» はじめまして!ありがとうございます(;_;)♡これからも宜しくお願いします〜!! (2022年8月28日 21時) (レス) @page38 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
かえる。(プロフ) - 初コメ失礼します!いつも楽しく読ませてもらっています!応援してます! (2022年8月28日 21時) (レス) id: 06d9623eb5 (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - いぬU・x・Uさん» はじめまして!そんなふうに言っていただけて嬉しいです(;;)まだ何も起きていない平和なお話なのですが、楽しく読んでいただけると嬉しいです!ぼちぼち頑張ります〜! (2022年8月28日 21時) (レス) id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
いぬU・x・U(プロフ) - 初コメ失礼します…!とっても素敵なお話をありがとうございます!!これからも主さんのペースで更新応援しております〜!! (2022年8月27日 13時) (レス) @page37 id: b1951e364b (このIDを非表示/違反報告)
parumu(プロフ) - リーフィア推しの【タクト】さん» そうなのです、読んでいただきありがとうございます🥰 (2022年5月24日 20時) (レス) @page29 id: 3fe3b17a70 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:parumu | 作者ホームページ:https://mobile.twitter.com/parumu_u_62
作成日時:2022年4月23日 16時