side:E&N『雷鳴』 ページ6
雫が目を覚ます数刻前の事。
「…それで?雫さんの適性は?」
桃色の髪を束ねながら、ネヴィロスは雫のことを尋ねる。
「…気象よ。アンタも煩い人よね。シズクサンシズクサンって、言わないと死ぬ奇病か何か?」
それに対して辛辣な答えを返すのは、雫を勧誘する担当のユーフラテス。
2人は給湯室でいつものように罵り合っている。それはもう、フロンティッドでは咎められもしない、日常的な光景の一つだった。
「こちらこそ、お前より鬱陶しい奴見た事が無いよ。珍妙な生き物もいるもんだね。」
普段の温厚な人柄からは想像のつかない、彼らの皮肉の飛ばし合いは社内ではごく普通の事だ。
しかし天崎雫が『選ばれた』ため、当分の間は険悪な雰囲気を隠し通さなければならなくなった。
「ピンク野郎とは最低限しか顔を合わせたく無いのに!ロマーナめ、いつかあの羽もいでやる。」
ユーフラテスは手にしていたココアをグッと飲み干すと、コップを乱暴に置いてそう呟いた。
その言葉に見向きもせず、ネヴィロスは給湯室の戸に手をかける。
ドアノブを捻る一歩手前でネヴィロスは、ユーフラテスに背を向けたまま、鋭利な言葉を首筋に押し当てるように話した。
「雫さんに無体を働いたら、お前を神界で1番苦しいやり方で転生処分する。何度も巡りたくなければ何もするな。」
2人は窓越しに聞こえる雷鳴に耳をすまし、これから出会う相手へ想いを馳せた。
続く
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作者名:酔風 | 作者ホームページ:http://uranai.nosv.org/u.php/hp/lovernish-now/
作成日時:2021年5月30日 21時