またしても、恋愛の主役は我々だ！【短編集】 (ページ48)

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「……」

私は病室に静かに足を踏み入れて、ベッドに近づいた。

「お義母さ＿＿＿＿＿」

「来ないで！！！！！」

一瞬ひるんでしまって。その場で立ち止まった。
お義母さんは、鼻をおもいきりすすって、こちらも振り向かず、話し出した。

「私はね、あなたを嫁だと認めてへんよ。
そうちゃんを私から奪おうとした鬼よ！！！

あんたのせいでそうちゃんはこんな目にあっとるんよ…

もう、この子に近づかないで！！！！！！」

.

あぁ、もうだめだと思った。

私の最愛の男性は私のせいで植物状態で、

私の最愛の男性の母親は私を強く憎んで、

最愛の人の最愛の人を、悲しませた。

だから、私は軍曹から離れることにした。

それから二ヶ月後、風の噂で、軍曹の意識が戻り、退院したことを聞いた。
でも、もう縁は切ったのだ。
軍曹が私といたら、きっと、軍曹のお母さんは、悲しんでしまうだろうから。
いつものように仕事を終えて、会社を出る。

出てすぐの階段には、軍曹が、座っていた。

彼は、私がちょうど会社から出た瞬間、私の気配に気づいたかのようにこちらを振り返った。

「Aさん！」

嬉しそうにこちらに駆け寄ってくる。

「ぐん、そ…」
「目、覚ましても、Aさん傍にいてくれないから、凄く不安でした」

彼の輝く笑顔が眩しすぎて、泣いてしまいそうになった。
軍曹は、少しだけうつむく私の頬を撫でて、それから私を抱きしめた。

「ぐんそ、だめ…」
「…なにが、だめなんですか？」
「私と、はなれなきゃ…」

弱々しく軍曹の胸板を押した。
けど、益々軍曹は私を抱きしめた。

「私のせいで、軍曹は危ない目にあった。
お義母さんだって、私を恨んでた。
私、軍曹と一瞬にいちゃいけない。」
「なんで、そんなこと言うんですか。」

強くて震えた声で、軍曹は私を叱った。

.

.

「俺には、貴女が必要なんです…貴女じゃなきゃだめだ…

だから、お願いです。

俺と、結婚、してください。」

.

.

やっぱり、私も、あなたじゃなきゃ、だめです。