5話 ページ5
「そう言えば、名をまだ聞いていなかった」
万斉は、孤児である彼女にちゃんとした名前があるのか少し不安だったが、彼の心配は杞憂に終わった。
「A…。暫く誰にも呼ばれてないから忘れかけてたけど」
「Aか、良い名でござる。拙者は河上万斉と申す。あの男は高杉晋助だ。」
そう言って万斉は前を行く高杉を指差す。
彼は話にこそ入ってこないが、きっとこちらの話は聞こえているのだろう。
「ばんさい…しんすけ…」
もごもごとAは口の中で二人の名前を繰り返した。
自分の名前すら忘れかけていたのだ、他人の名前を呼ぶなんてことはもう長いことなかったのだろう。
先程より少しだけ柔らかくなったAの表情に万斉もやっと年相応の顔に近づいたと安心した。
かぐや姫として恐れられてきた少女の孤独がどれだけのものかなどわからない。
生きるためにその手を血に染めた少女の哀しみなど、わからない。
それでも、この手を振り払うことはないだろう。そう万斉は思った。
温かな手に、心を満たされたのは少女だけではなかったのだ。
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きつねここ(プロフ) - コメントありがとうございます!頑張って更新します! (2018年10月16日 7時) (レス) id: 2ea163fd5a (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃむーしゅ(プロフ) - 鬼兵隊好きなので続きが楽しみです! (2018年10月16日 3時) (レス) id: ea9a3f21f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きつねここ | 作成日時:2018年10月13日 20時