3話 ページ3
その場には、死体と血の海が広がっていた。
これが全てかぐや姫と呼ばれる少女の仕業ならその腕は確かなものだろう。
血濡れた少女は高杉や万斉を見ても表情を変えず、誰だ。と問うだけだった。
しかし、高杉は彼女の問いには応えなかった。
その代わりに、お前が巷で噂のかぐや姫か。と問いを返す。
「かぐや姫…?私が?真逆、溝鼠の間違いでしょう。汚い賊を姫だなんて一体誰が呼ぶのかしら」
少女はそう言ったが、確かに彼女は姫と呼ばれてもおかしくはないほど端正な顔立ちをしていた。
勿論、ここが血の海ではなく花畑ならの話である。
そして、彼女を見た万斉は、何処か納得したような。しかし、やはり信じられないようなそんな想いを抱いた。
無差別殺人だというから、どんな極悪非道な女かと思えば、実際には食い物と金目の物にありつこうとした孤児である。
そこまではよくある話だ。ただ、信じられなかったのはその実力。
とてもじゃないが、あのか細い腕に大人の男を仕留める力があるとは思えなかった。
「それで、おにーさんたちは何をしに来たの?貧しい子供に金になるものを恵んでくれる?」
めんどくさくなったように、少女は目を細めてそう言った。
会話に飽きたのか、疲れたのか、その表情からは分からない。
「嗚呼、そうだなァ。…手前のその力を俺の下で振るうンなら、飯と寝床は用意してやらァ」
それは、高杉の率いる鬼兵隊への誘いだった。
興味を持ったのだ。灰色のかぐや姫に。
「えぇ…?こんな少女を連れ帰ろうなんて随分な趣味ね。お巡りさんに捕まっちゃうわ」
高杉の言葉を冗談程度にしか捉えなかった少女は呆れ笑いを浮かべてそう言った。
「手前のソレは、通り魔に留めとくには勿体ないねェ。どうせ賊ならこれ以上何をしたって同じじゃねぇか」
飯と寝床。その代わりに命を預ける。
傍から見れば随分割に合わない話だが、少女にとっては温かい飯も、雨のかからない寝床も充分なものだった。
暫し何かを考えた彼女は、やがて静かに首を縦に振った。
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きつねここ(プロフ) - コメントありがとうございます!頑張って更新します! (2018年10月16日 7時) (レス) id: 2ea163fd5a (このIDを非表示/違反報告)
まっちゃむーしゅ(プロフ) - 鬼兵隊好きなので続きが楽しみです! (2018年10月16日 3時) (レス) id: ea9a3f21f7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:きつねここ | 作成日時:2018年10月13日 20時