君と見た未来〈5〉 ページ23
しかし何も答えることなく、北山はまた水平線に向かって沈んでいく夕日を真っ直ぐ見つめた。
自分だけ北山に視線を残しているのが恥ずかしくなって、追うように視線を夕日に向けた。
こんなにしっかり夕日が沈むのを見たのは久々かもしれない。
すごく綺麗で、息を飲むように見つめていた。
徐々にオレンジ色の光の面積が少なくなっていく。
ゆっくり、じんわり、でも確実に。それに伴うように少しずつ暗くなっていく空が、闇に呑まれるような感じがして、自分の心と重なって心細くなる。
…いけない、今自分は感傷的になっている。どうにかして平静を装うのに必死になる。
先程の問いは、無かったことになっているのだろうか。その答えは教えてくれないのだろうか。もう呆れた？やっぱり面倒に思った…？続く沈黙に焦燥を隠しきれない。
波の音だけがずっと意識の遠くで聞こえていた。
「出来るよ、絶対」
静かに、でも力強く、北山はそう言った。
その言葉が、すとん、と自分の中に落ちたのが分かる。
そもそも、こんなときに出来ないかもな、なんて言うようなヤツじゃないのは分かっていた。ていうか…普通に考えてもそんなのいない。
それでも無意識のうちにその言葉を待っていたのだろうか。
きっと、そう…
北山の、その言葉だけで良かったんだ。
「…そん時はさ、藤ヶ谷、お前と一緒がいい」
ああ、やっぱり。
きっと彼は何もかも見透かしていた。
ほんとに、敵わない。
思わず、北山の方を向いた。
綺麗だ、と素直に思った。
逆光で、こちらから見るには少し暗かったけれど、夕日の光を浴びてオレンジ色に染まった明るめの髪から覗く、真っ直ぐ前を見つめていたあの力強い眼差しを。
俺はきっと、そのときの北山の、あの横顔を忘れない。
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作者名：yuma | 作成日時：2016年12月20日 1時
