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Holy night with you〈5〉 ページ12

藤ヶ谷の一歩後ろに続いてしばらく進むと、少し高台になっているところに遊具の無い公園が見えた。





「あ、誰もいない」


「もー寒いからじゃね?」


「春はお花見に向いてて、意外と人いるんだよ」





公園を囲む木々にはクリスマス仕様なのかピンクと青の電飾が飾られていて、ささやかながらイルミネーションを楽しめるようになっていた。きっと春には桜が咲いているんだろう。





なんでこんな穴場みたいな場所知ってんの?…なんて、きっと聞くだけ野暮だ。











もっと中に入っていくと、一本だけ他のよりも背の高い木が公園の真ん中に植えられていた。電飾の量も多く一段と煌びやかで、きっとメインのツリーとされているであろう様子が伺える。




言葉もなく、迷わずふたりそのツリーの前に並んだ。










「…きれい、だな」






見上げ、呟いた。
繁華街に並ぶような、豪華絢爛なものではない。てっぺんに星も、あの赤と白のくるくるしてる傘の持ち手のようなキャンディも、靴下やプレゼントや鈴の飾りも無い。ツリーの形だっていびつだ。



…それでも藤ヶ谷の隣で今一緒に見ることが出来ている、その事実がどうしようもなく俺の気持ちを高揚させる。特別な感情を持っているのがこっちだけだと分かっていても、それでも嬉しくて、一瞬のこの幸せを噛み締める。








暫くの間、静寂に包まれた中で、ただこの景色を眺めていた。










「…俺、ずっと……ずっと、好きな人と一緒にこのツリーを見に来たくて」



「毎年、誘おうとしてはやめて…を繰り返しててさ」





ぽつり、ぽつりと藤ヶ谷が話し始める。きっと一緒に見に行きたかったその誰かを想いながら、ゆっくりと。俯いていて表情はよく見えない。俺は相槌を打つこともせず、ただ静かに藤ヶ谷の話を聞いていた。



.

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作者名:yuma | 作成日時:2016年12月20日 1時

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