貴方の香りに包まれて〈1〉 ページ1
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「みつおはー」
「はよー、ニカ」
お気に入りなのかは知らないがよく着てくるロングコートを脱いで、寝癖隠しのために被っているハットも取り、いつものように俺の隣に腰掛ける。
宮田と千賀と玉は最近始めたスマホゲームで盛り上がっていて、横尾さんと藤ヶ谷は雑誌を広げながらふたりで談笑している。
別にどこかに入りにくいとか、余り者だとかそういう訳ではないんだけど、自然とニカといる時間が最近増えていた。
それはそれで、なかなか楽しい。
「お前、髪ひどいぞ?」
「今日マジヤバいよね!あとでシャワー浴びるわ」
「おー、そうしろそうしろ」
それから話題は一昨日共演した芸人さんの話、そこで紹介してもらった美味しいと評判のもつ鍋の話へと移っていった。
「それ絶対美味いやつじゃん!……ん?」
「え、どした?」
静かになったと思いきや、急にグッと顔を近づけてくる。
短くなった髪が頬に当たって少しくすぐったい。
「な、んだよ…?お前、犬みてーに…」
ぐい、と肩を押し返すと素直に元に戻ってはくれたが、小難しい顔をしていた。ひとりでブツブツと何か呟いている。
え、今のアクションは何?
突拍子も無いニカの行動に首を傾げていると、ようやく俺に向かって口を開いた。
「みつ、香水変えた?」
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作者名:yuma | 作成日時:2016年12月20日 1時