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「ねえ、聞いてる？」
そして気づけば目と鼻の先にあったのはそんな彼の顔で。
焦った俺は仰け反りつつ
「その！俺、昨日の記憶が一切なくて！どういう経緯で君をこの家に招き入れたのか全く覚えてないんだけど！ここ、俺ん家だから！だから＿＿＿＿」
そこまで言い切った時だった。
目の前の彼は何故か眉をへの字にしてシュンとした顔をした。
……って、何故君がその顔？！
「あんなに昨日俺のことを堪能しといてそれってひどくない…？」
「は…？」
「家主君は何も覚えてないみたいだけど、俺の体は覚えてるよ？あんなに相性よかったのに……」
「い、いやいやいやいや！！」
彼の口から飛び出してくる言葉全てに俺は心当たりがなくて。
訳もわからず首を振っていると
「それで言ってくれたよね？住む所ないならここにいればいいよって。俺、その言葉すごく嬉しかったのに………」
挙句の果てに目の前の白いか弱い男は泣いてしまったのである。
え、てかこれってまさか俺が泣かせたみたいになってる感じ？！
「ちょっと待って、本当に俺そんなこと…」
「言ったよ？だから俺、頼りにしようと思ってっ、」
どんどん小さくなっていく彼に俺はこれ以上何も言えなくて。
しかしこればかりはいくら考えても真実はわからなそうで。
そしてこの状況は……もう、仕方ないじゃないか。
「わ、わかったよ……俺も悪かった？し、じゃあ君の住む場所？が見つかるまでならいてもらっても……」
「あ、ほんと？」
「え？」
そう俺が折れた瞬間、目の前の彼はスっと何やら黒い機械を取り出した。
そしておもむろにボタンを押すと再生されるのは俺の声。
「住む場所が見つかるまでいてもいいとのこと、じゃあよろしくお願いしま〜す♡」
そして俺はこの時悟ったのだ。
俺はまんまとこの目の前の詐欺男に騙されたのだということを＿＿＿＿＿＿
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作者名：犲 | 作成日時：2022年1月26日 17時
