もすこみゅーる。【Daiki,A×Kei,I】 (ページ13)

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定時になった瞬間、俺はすぐに帰る支度をし、会社から飛び出した。

だが、最近の俺はとことんツイてないらしく。

「嘘だろ……」

あの路地裏のバーは今日は定休日らしかった。

せっかく中島に助言してもらって、仕事も必死に終わらせてきたのに。

自分の不幸さを恨めしく思いながら、俺はバーを後にした。

「ただい…」

「あ」

家に帰り、ドアを開けると玄関先には靴を履きかけている慧がいた。

「有岡おかえり〜ちょうどよかった！俺今から出かけるからよろしく〜」

慧はそう言うとさっさと靴を履き、ひらひらと手を振ってドアから出ていった。

「は……え、いやいやおい、お前こんな時間からどこ行くんだよ？」

俺は何故か慌てて慧を引き止める。

すると慧は一瞬、バツが悪そうな顔をした後うーんと唸り

「仕事？かな」

なんて言い、俺の手を振り切って行ってしまった。

「絶対仕事じゃないだろ……」

俺はそんな独り言を呟きながら、家に入った。

ただ、テレビを見ていても、風呂に入っても家にいないはずの慧の事が頭をよぎる。

結局慧は日付けが変わっても帰っては来なくて。

いやいや、というか慧は大の大人の男だぞ？

しかも昨日から騙されて、一緒に住みだしたようなほぼ他人のような男をこんなに心配するなんて、そんなにお人好しだったかな、俺は。

そんなことを心の中で呟きながら俺は気づけば就寝していた。

朝。

いつもの朝日で起き上がると家の中にまだ慧はいなかった。

「……」

ただこれが今までの日常だったはずなのに1日家に人がいただけでこんなにも心にぽっかり穴が空くようなものなのか。

というかあんな同居人俺は認めてない。

もしこのまま帰ってこなかったらそれはそれで本望なはずなのに。

「俺も弱くなったな……」

なんて俺が呟きながら洗面台に向かった時だった。

「弱くなったって何が？」

急に洗面台と面するお風呂から出てきた裸体の人物はもちろん、慧だった。